レーベンはとがひら(特別養護老人ホーム)

要約

滋賀県甲賀市にある職員88人の特別養護老人ホームで8月に職員と利用者を合わせて合計31人の陽性者が発生した。感染経路と最初の陽性者は不明、発生当初、体調不良を理由に休む職員が数人おり、その内1人の職員が受けた抗原検査にて陽性が判明した。翌日までには、全入居者(抗原検査で陰性者含む)及びショートステイ(SS)利用者にPCR検査を実施し、事業所内に併設されるSSでは新規利用者の受け入れ停止、デイサービス(DS)は営業停止の措置を取った。発生フロアの担当介護職、看護職が全員出勤できない状況の中、同法人内からの応援部隊と、業務の一部縮小によって人員不足に対処、DMATのサポートを受けて目の前の陽性対応を行いながら、陽性対応後の立て直しに向けて施設長を中心に取り組んだ。出勤停止および出勤拒否の職員に対し、出勤再開の話し合いを進め説明会なども実施し、大半の職員は復職を表明し、順次現場に戻ることができた。ゾーニングを段階的に解除し、他施設からの応援派遣が終了し、サービス再開を迎えた。

医師からみたポイント

よかった点
  • 有効なゾーニング
    DMAT介入によるゾーニングを契機に新規感染発生が止まり、収束に向けた一歩になりました。
  • スタッフ確保の工夫
    自宅待機スタッフ復帰のための説明会や応援職員への支援、特別手当等の工夫を行いました。
  • 一覧性の高い情報共有媒体の利用
    ホワイトボードなどでひと目でわかる情報共有の工夫を行いました。
その他アドバイス
  • 既に検討されている有効に機能する非常時対策 / BCPを今回の経験を活かしながら策定するとよいでしょう。
  • 特に有効な初期対応(今回のケースではゾーニング等)の周知を進めるとよいでしょう。
インタビュー実施日:2021/01/06 インタビューご回答者:施設長 生田雄さん 事務長 河岸寛之さん 法人事務局長 森本信吾さん

法人概要

法人の経営主体 社会福祉法人 近江和順会
法人全体の職員数361人(2020年8月時点)
法人全体の事業所数16
実施事業 特別養護老人ホーム、グループホーム、デイサービス、ショートステイ、居宅介護支援、訪問介護
ウェブサイトhttp://www.ohmiwajunkai.or.jp/

拠点概要

所在地滋賀県甲賀市
開設年2015年
ウェブサイトhttp://www.ohmiwajunkai.or.jp/hatogahira_kawasemi/
フロア 利用者数(定員) 職員数
特別養護老人ホーム 2、3階 73人※うち2人は入院中(72人) 39人
短期入所生活介護 3階 当日利用13人(20人) 9人
居宅介護支援 1階 64人 2人
通所介護 1階 当日利用16人、登録64人(25人) DS職員9人
送迎5人
事務所 1階 - 事務8人
相談員4人
看護師8人
清掃4人

新型コロナ陽性者等発生と対応の概要

陽性者数(うち死亡者数) 特養入居者15人、DS利用者1人、職員15人の合計31人(死亡者0)
濃厚接触者数 延べ人数不明
検査実施全入居者(抗原検査で陰性者含む)及びSS利用者、退所済のSS利用者とDS利用者のうちの希望者、全職員にPCR検査を実施
感染源・感染経路 不明
事業所が発生・収束とみなす日2020年8月3日最初の陽性発覚、8月21日ゾーニング解除で収束、8月26日他施設からの応援終了
発生から収束までの休業や利用制限 SS:8月4日からの新規利用者の受入れを休止、9月1日に再開、利用中の13人の利用は、利用者及び職員のPCR検査結果までは施設にて待機してもらうこととなった
DS:8月4日から8月31日まで休止
事業所外からの応援(法人内外)法人内から介護職12人、看護師3人、合計13人が援に入る

陽性者発生以前の状況・感染対策等

  • 本事例以前の新型コロナにかかわる状況:
    • 陽性者や濃厚接触者、接触者の発生はなかった。
  • 感染対策の特徴:
    • 標準予防策を徹底していた。
  • BCP策定状況:
    • 陽性者が出た場合の出退勤のルールなどマニュアルを作成し、ゾーニングの方針などを記載していた

新型コロナ陽性者発生状況と対応の経緯

病日 日程 項目 備考
1 2020年
7月
27日
  • 体調不良で休んでいた職員が数人いた
  • 8/3に最初に陽性判明した職員Aが発症
(注)感染経路と最初の陽性者は不明。本事例紹介においては、最初に陽性が判明した職員Aの発症日を第1病日とみなすこととする。
8(最初の陽性者判明日) 8月
3日
  • 体調不良で休んでいた職員Aが病院にて抗原検査で陽性となる
  • 同病院を受診していた入居者A、職員Bが抗原検査で陽性判明
  • 体調不良で休んでいた職員Cがクリニックを受診、紹介された病院にてランプ法で陽性判明
  • 入居者で症状ありの12人に抗原検査を実施、2階の入居者10人が陽性と判明する
  • 2階の無症状34人に抗原検査を実施、入居者2人の陽性判明
  • 保健所と県庁の担当者が来所
  • 県知事が施設名を伏せて陽性者発生を公表
  • 2階フロア全域(A・Bブロック)がレッドゾーンとなり、2階の抗原検査陰性の入居者32人、介護職員25人、看護師6人が濃厚接触者と認定。これに伴い、2階介護職員
  • 看護職全員が出勤停止となった
  • ガウン着用で濃厚接触者を個室隔離したが、現場の混乱が続き徹底されていない状態であった
  • 他拠点へ応援依頼
  • ホームページで情報公開を開始
9 8月
4日
  • ショートステイの新規受け入れ休止(利用者は収束まで施設内待機)、デイサービスの休止
  • 全入居者58人、(抗原検査で陰性者含む)及びSS利用者13人にPCR検査実施(結果は翌日)
  • 介護職員25人、看護師6人にPCR検査を実施、そのうち10人が陽性と判明
  • 法人内の別事業所から看護師2人、介護職2人の応援
  • 3階職員の中に家族の反対により出勤できなくなった人が出る
  • 出勤可能な職員の希望者に宿泊先を確保
10 8月
5日
  • 2階入居者2人が陽性と判明。
  • 1階、3階の職員、計53人にPCR検査実施。
  • 法人内の別事業所から看護師1人、介護職7人の応援
11 8月
6日
  • 退所済のSS利用者、陽性者の勤務日にDSを利用した利用者の希望者にPCR検査を実施(SS:11人、DS:12人)
  • 職員1人がPCR検査実施
  • 前日の検査からSSの担当の職員2人が陽性と判明、SS利用者は8/21まで退所不可となる
  • 保健所、県庁が来所、DMAT同席のもとで施設内のゾーニングを再実施、職員の負担とコスト削減を意識し分かりやすく変更
  • SS職員から陽性が出たことにより、SS職員の中で出勤拒否する者が出てきたため、SS相談員が現場応援となった
  • 法人内の別事業所から介護職2人の応援
12 8月
7日
  • DS利用者1人の陽性が判明(最後の陽性者)
13 8月
8日
  • 陰性濃厚接触者や出勤拒否職員と連絡を取り、出勤の話し合いを継続
14 8月
9日
  • DMAT常駐開始
15 8月
10日
  • 陽性で入院した職員の退院日が決まりだす
  • 濃厚接触者で自宅待機だった職員2人が復帰
16 8月
11日
  • 濃厚接触者で自宅待機だった職員4人が復帰
  • 陽性で入院した職員が順次退院
18 8月
13日
  • 法人内の別事業所から介護職1人が応援
8月
15日
  • 濃厚接触者で自宅待機だった職員2人が復帰
22 8月
17日
  • 退職者が出る
23 8月
18日
  • 濃厚接触陰性で自宅待機している職員12人と退院後に復職できていない職員3人とその他の職員に来所してもらい、復帰に向けた説明会を開催
  • 全体に説明を行った後に、職員の個別相談等を行い、ほとんどの職員の復職意向が固まる。翌日以降に徐々に復帰となった
25 8月
20日
  • 2階のゾーニング解除、濃厚接触者の健康観察期間終了
26 8月
21日
  • 3階のゾーニング解除、施設内全体のレッドゾーン解除、保健所が収束とみなす
  • DMAT常駐終了
31 8月
26日
  • 他施設からのすべての応援派遣が終了
37 9月
1日
  • ショートステイの新規受け入れ、デイサービスの再開

対応の体制

  • 法人本部で理事長、常務理事、法人事務局長が、現地では施設長、事務長を中心に対応。

情報の収集・把握・共有

  • 普段使っている社内システムを使わずにホワイトボードに状況とやることを書き出し、終わったら消すことを繰り返した。

情報の周知・発信

  • 利用者、職員、関係機関等への報告・周知:
    • 職員間の情報共有はグループLINEで行われていた。
    • 平時の約束は介護記録ソフトのお知らせ機能で情報伝達をしているが、やっている時間がなかったこと、法人内別事業所から応援に来ている職員にも伝えるためにホワイトボードに張り紙をして知らせた。
  • 外部への情報発信:
    • 抗原検査により最初の陽性者が判明した当日(8日目)、県知事が施設名を伏せてクラスター発生について会見を実施した。
    • 同日深夜にホームページにて第一報を公表、その後、毎日ホームページでその日の状況を発信していた。
    • 発生当初は、利用者の家族からの心配の声と、メディアからの取材依頼が殺到、施設名が公表されたことにより地域からの苦情や施設前の道路からの見学者が増えた。
    • 15日目(陽性者判明から7日目)に滋賀県老人福祉施設協議会及び滋賀県介護サービス事業者協議会へ、「新型コロナウイルス感染症のクラスター初期対応について」として、発生状況とそうならないための対策を他事業所の対策となるように発信。

利用者・入居者への支援と対応

  • 最初の陽性者判明日(8日目)に、濃厚接触者となった2階の職員と看護師が出勤できない状況になり、陽性者が出たことで他の階も職員も出勤しないことを希望する者もいて、日々の運営に必要な日勤、夜勤の人数を確保しながらPCR検査を進めることで手一杯だった。
  • 8日目(陽性者判明日)に2階をレッドゾーンと決めたが、ガウン着脱のルールなど曖昧で隔離しきれず、11日目にDMATの指導のもとで感染対応が行われるようになった。
  • 8日目に全入居者家族に相談員から電話連絡、検査を受けていること、結果がどうだったかを追って電話連絡。収束後にもお知らせのお手紙を送った。
  • 入居者にも状況を随時説明したが、あまり理解していない様子の方が多かった。
  • 9日目に全入居者及びSS利用者にPCR検査を実施した。
  • 入居者の栄養摂取を最優先とし、一部、食形態を変更、最低限のオムツ交換を実施、入浴なし、清拭なしの日があった。命をつなぐことを優先し、レッドゾーン解除の26日目(陽性者判明から18日目)に通常のケアに戻した。
出所:レーベンはとがひら

職員の状況とフォロー

  • 当初の状況
    • 8日目(陽性者判明日)、2階フロア全域(A・Bブロック)がレッドゾーンとなり、2階の抗原検査陰性の入居者・介護職員・看護職員が濃厚接触者と認定。これに伴い、2階介護職員・看護師全員が出勤停止となった。濃厚接触者は31人(介護職員:25人、看護師:6人)、全職員86人中40人の出勤が停止、特に、看護師8人中8人が出勤停止、2階の介護職全員と看護師全員が出勤できない状況となった。
    • 陽性者が出たことによって職員は混乱し、恐怖を感じていて、施設長と事務長ができる限り個別に話を聞くようにしていた。
  • 人員確保について
    • 同居家族に高齢者や子供がいる人を避け、独身男性から勤務を依頼した。
    • 2階では勤務したくないと拒否する人もいたが、そのことで職員間にわだかまりができることはなかった。
    • 職員の中には、家族の反対で勤務が継続できない人がいた。
  • 応援について
    • 法人の本来の方針として、当初、他施設から応援は出さずに陽性者が出た施設の中で解決するという方針だったが、応援を出すしかないとなり、本部からまず8人に個別に声を掛けて依頼した。
    • 8日目(陽性者判明日)の夕方に応援の人数をきめて、9日目に法人の常務理事、事務局長が看護師を同行で現場視察をした。
    • 8日目(陽性者判明日)から法人内他施設より、介護職10人、看護師3人、合計13人の応援があった
    • 応援が開始されてから手当について協議し、危険手当の金額変更と応援終了後5日間の特別休暇が決定となった。
      • 危険手当:直接業務2000円/日→10000円/日、間接業務1000円/日→5000円/日に変更
      • 特別防疫休暇:防疫休暇3日(感染者、感染の可能性のある者)、他拠点応援者(臨時)応援後5日
    • 法人内の別事業所からの応援者は、当初はレッドゾーン以外の勤務を想定していたが人が足りずに2階の勤務となった人がいた。
    • 市の所有する宿泊施設とスポーツ施設のロッジを無償で借りた。
    • 応援職員用の物資(食品など)をそこへ運び、市、県にも物資をお願いして確保していった。
  • 復帰に向けて
    • 濃厚接触陰性で自宅待機している職員12人と退院後に復職できていない職員3人とその他の職員に来所してもらい、復帰に向けた説明会を開催した。
    • 全体に説明を行った後に、職員の個別相談等を設け、ほとんどの職員の復職意向が固まる。翌日以降に徐々に復帰を行うこととなった。
    • 職員間の分断が起こらないように、施設でクラスターに対応した職員には、陽性となった職員の退院や復帰の基準を伝えて再感染の不安がないこと、陽性となり入院した職員には、誰も責める人はいないから安心して戻って欲しいということ、濃厚接触者で自宅待機だった職員には、経過とこれからの対応策を伝えた。
    • 職員間でメッセージを送った。
    • 3人が復職せずに退職した。
  • 労災について
    • 陽性者は労災認定の認識だったが、滋賀県で初めてのケースで労働局から認められないと回答、労働保険か健康保険か、どちらの対象かについて、協会けんぽと労働局の行ったり来たりで進まずであった。
    • 当初、労働局から、「最初の1人は勤務外で感染しているから対象外」と通達を受けたが、交渉により陽性者は全員労災対象となった。
    • 労災申請は、申請時に1人15枚の書類が必要で大変だった。
      • 使用者報告書:6枚
      • 申立書:8枚
      • 業務上負傷兼任書:1枚
      • その後も5号様式、8号様式、23号様式など様々な提出が必要となる。
    • 労災認定後、入院での治療費と給与補償が支給された。

医療機関、保健所・行政との連携・調整

  • 保健所、県庁
    • 11日目(陽性判明から3日目)に県庁担当者、DMATが来設、ゾーニングと感染対応の指導を受けた。発生当初、ゾーニングに関する知識がない状態で行って職員を混乱させるよりは、指導を待つこととし、それまでは防護具の着用の徹底のみ行った。
    • 感染対応の現場指導を受けるときは現場の介護主任が一緒にまわることが大切。
    • 感染対策については保健所、営業可否については県庁とのやり取りが必要で、両者と情報共有しながら対応を決めていった。
  • 医療機関
    • グループに病院があるから普段から連携しているが、感染症指定医療機関ではないので受け入れられないとのこと、助けが得られない状況だった。
    • 陽性者が感染症指定医療機関から退院したのち、グループの病院に一度入ってから施設に戻すことができたらよかった。

関係事業所・委託先等との連携・調整

  • 施設内の委託業者
    • 厨房の業者は、厨房内に限りサービス提供を継続。
    • 事前に「厨房の中に濃厚接触者がいない場合は通常通り、中に出たら厨房は止めて外部から食事を運ぶ」という取り決めが事前にあったことがよかった。
    • 濃厚接触者ではなかったが厨房の職員で検査を希望する人がいた。
    • リネンの外注サービスはこの期間も継続、清掃は部分的に外部委託でこの期間は停止。
  • 他事業所
    • 在宅系の同業者から、苦情・苦言の架電多くあって時間を費やした。
    • ヘルパー、他事業所から、「レーベンはとがひらを使っていたからPCRを受けさせてくれ」「この利用者が濃厚接触者の可能性はあるのか教えてほしい」などの問い合わせが相次いだ、収束後は労ってくれることもあった。
    • 居宅支援事業所からの問合せが非常に多く、在宅サービス事業所との間に挟まれて苦労されたことが伺える。

感染防御資材等の調達

  • 9日目(陽性判明から1日目)に法人本部の視察、不足している物品(アルコールボトル、足踏みゴミ箱など)を購入、他施設の在庫、県と市の備蓄から調達。

事業支出・収入等への影響

  • 支出:
    • 一般ゴミでの廃棄できず医療廃棄物として扱うよう指示を受け、廃棄費用がかさみ、多い日で1日16万円かかった。
    • 最初のゾーニングでPPEの脱ぎ着が多いものだったが、要領が分かってから12日目(陽性判明から4日目)にゾーニング変えて、80ケースから35ケースにゴミを減らせた。
    • 職員の宿泊費用は7部屋を5,500円で2週間確保した。
    • 県の補助金事業でゴミ廃棄の費用、職員の宿泊費用は補填された。
    • 職員に対しての危険手当、直接の業務は1日1万円、間接的な業務で1日5000円とした。
    • ショートステイの方が健康観察で施設内にとどまる場合の費用について、法人で協議した上で、施設負担とした。
  • 収入:
    • 特養:満床に戻ったが入院が増えて減収。
    • デイサービス:稼働率が20%ほど減少、利用者とその家族の希望で他事業所に移った人がいた。
    • ショートステイ:稼働率が20%ほど減少。
    • 施設全体で、発生当初の8月は1,000万以上の減収、回復傾向にあるが戻っていない(2021年1月時点)

風評被害と対応

  • 収束後、特に外部との関係悪化や風評被害を受けているという印象はない。
  • 発生当初は、「感染を起こした者が悪」という印象があったが、「中傷する人が悪」と変わってきている印象がある。
  • クラスター発生中は、近隣の一部から以下の声があった。
    • 感染したら困るので施設の職員は買い物に出歩かないでほしい。
    • 地域の人はみんな不安に思っているのに何も感じていないのではないか。
    • 郵便などの配達員が感染し、地域に蔓延したらどうするつもりか。
  • 職員が中傷によってダメージを受けないように、利用者や職員の家族、法人他法人や他事業所、地域の応援者などからの応援メッセージを施設内に掲示した。

対応の振り返り

  • 収束後も、陽性となった入居者の入院が続いたり、ADLが低下したままの入居者がいたり、本人や家族にとっては「収束とは言えない」という状況が続き、影響が大きい。
  • 陽性者だった職員、濃厚接触者となり健康観察のため長期休みとなった職員、陰性でクラスターに対応した職員などそれぞれに思いがあり、分かち合うことが難しく、収束後も組織の課題として残ることになる。

陽性者対応の経験からの学び・教訓

  • 外部との接触がある限り、陽性者を完全に出さないことは不可能なので、陽性者が出てもそこから広げない感染対策を行うことが大切。
  • 法人内からの応援が困難となる単独事業者や小規模事業所で同様の事象が起こった場合、職員の確保は困難を極めるので準備が必要、当事例を機に、滋賀県では応援派遣事業、代替サービス事業が制度化された。
  • 計画が機能しなかった経験から、事前計画の準備がより難しくなった印象があり、何が必要な準備かよく検討する必要があると感じている。
  • 職員の確保と対応方法(ゾーニングとPPE導入の決定など)が専門家の指示の下で早期に確立できるような支援体制の確立が不可欠である、出来るだけ発生当日に、遅くとも翌日には支援に入れることが理想であると感じた。
  • 発生時の職員の出勤の可否については、職員のみならずその家族の理解と共に平時より取り組んで行くことが非常に大切である。
  • 陽性となった職員や濃厚接触となった職員の休業補償などをあらかじめ法人で取り決め周知しておくとよい。
  • 職員に対し、自分たちの対処能力を過小評価しすぎずに、正しく迅速に対処して2週間頑張ったら必ず終わることを伝えることが大事。
  • 直接の介護応援だけでなく、消毒や、レッドゾーン以外での作業も多い、電話対応、物品の運搬や作製など後方支援のサポートも必要。

感染対応の経験を経て変更したこと・始めたこと

  • 変わったこと
    • 持ち込まないための対策は変わっておらず、むしろ基本的な対策が正しくできていれば安全だと考え、よりよい方向に面会制限の考え方を改めることができた。
    • 助け合いの意識を持つ職員が増えた。
    • 利用者と正面を向き合って話さないなど、介助の細かい場面ごとに感染対策を考えてルールを作るようになった。
  • 始めたこと
    • マスク外しての会話をなくすために休憩室の使用ルールを強化、休憩場所を一箇所に決めて、食べながら会話していないかをお互いに確認する。
    • 特養ではフェイスシールドを基本装着することとした。
    • 1ケアごとに確実に手指消毒を実施できるよう環境を整備した。
    • 「業務縮小対応表」を作成、施設内で感染が発生し職員数が足りなくなったときに、休止する業務を定めた。
インタビュー担当:鎮目彩子・堀田聰子・磯野真穂・奥知久
記事担当:鎮目彩子・大村綾香・堀田聰子
医師からみたポイント:奥知久

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