拠点B(小規模多機能型生活介護)

要約

最初の陽性者は、発熱確認から、解熱、発熱を繰り返していたが、当該事業所の通所利用は継続していた。結果、濃厚接触者数は、27人(職員12人、利用者25人)と保健所より認定され、検査の結果、8人(利用者7人 職員1人)の陽性が確認され、クラスター事例として保健所から公表された。当初、公表を逡巡したために誹謗中傷に晒されたが、丁寧に近隣への説明を行い、地域包括、地域のケアマネ、区長、民生委員等の人的資源の協力によって、信頼を取り戻していった。事業所として、最初の陽性者の発熱時から積極的に検査に結び付けることができなかったことから、感染防止の空白期間が長く、クラスターを招いたと考えており、初動の重要性を再認識した事例であった。

医師からみたポイント

よかった点
  • 10日目の陽性者発生後にサービス利用停止や対応職員の固定などの対策を実施することでさらなる感染拡大を防ぎました。
  • 周囲からの誹謗中傷に対して、個別に丁寧に説明していくことで流れを変えました。
その他のアドバイス
  • 基本的感染対策手技の確認の徹底と有事対応のシュミレーションを行うとよいでしょう。
  • 発生時の周囲とのコミュニケーションや情報の出し方について検討をすすめるとよいでしょう。
インタビュー実施日:2021年1月18日 インタビューご回答者:事業所所長
法人介護事業部課長

法人概要

法人全体の事業所数17
実施事業 病院、介護老人保健施設、認知症対応型通所介護、通所介護、訪問看護、訪問介護、居宅介護支援、グループホーム、小規模多機能型居宅介護 等

拠点概要

フロア 利用者数(定員) 職員数
通いサービス 1階 27人(29人) 16人
宿泊サービス 1階
訪問サービス 1階

新型コロナ陽性者等発生と対応の概要

陽性者数(うち死亡者数) 8人(利用者7人、職員1人)(うち死亡者数0)
濃厚接触者数37人(利用者25人、職員12人)
感染源・感染経路通所の利用者Aが発熱、他の福祉施設(クラスター発生)を利用した際に感染したと考えられるが、その施設から発熱等の連絡はなかった。
事業所が発生・収束とみなす日7月9日~8月2日
発生から収束までの休業や利用制限7月18日〜8月2日(通いは中止、訪問・泊まりは一部継続)
事業所外からの応援(法人内外)
  • 関連病院から感染対策看護師が派遣され感染拡大予防対策を指導してもらう
  • 市からPPE等の支給

陽性者発生以前の状況・感染対策等

  • 本事例以前の新型コロナにかかわる状況:
  • 発生前は、徐々に身辺に感染が近づいている実感はあったが、特段準備をすることはなかった。
  • 感染対策の特徴:
  • 民家改修型の小規模多機能なので、部屋数が限られており、密を避けることは困難であった。同一法人の関連病院から感染対策看護師が指導に入り、イエローゾーンを設置して、人対人の接触を控えるようにした。
  • 事業所内では、陽性者がでる以前から管理者、ケアマネ、看護師で対策検討会を行っていた。

新型コロナ陽性者発生状況と対応の経緯

病日 日程 項目 備考
1(第1病日) 2020年
7月
9日
  • 利用者Aが通所の利用中に、発熱し施設内隔離対応した後帰宅
3 7月
11日
  • 利用者Aの家族から解熱したとの連絡が入るが、通所送迎の際、37.6度の発熱を確認したため家族に連絡するも来所不可で施設内隔離(健康観察)し、職員が自宅へ送ることとなる
  • 利用者Aは、個室隔離し、特定の職員1人が介助に入ることとして、他の職員は接触しなかった
4
5
7月
12日
7月
13日
  • 利用者Aの通所利用なく自宅で過ごす
6 7月
14日
  • 利用者Aの解熱の連絡あり、通所を1日利用
7 7月
15日
  • 利用者Aの下肢筋力低下が顕著なためクリニックを受診、中央病院へ紹介入院
8 7月
16日
  • 利用者AのPCR検査実施、陽性判明(感染経路不明)、病院から連絡あり
9 7月
17日
  • 保健所から連絡あり
  • 全職員に電話連絡
  • 利用者へ連絡
  • 利用者の家族、ケアマネへ連絡
  • 関係業者へ連絡
  • 保健所が情報公開
  • 行政から連絡あり
  • 保健所から検査技師と保健師が来所し、実地指導
  • 近隣の住民への戸別訪問と説明を実施
  • 市長が有線放送で陽性者発生を住民に知らせ注意喚起
  • ゾーニングの開始
10 7月
18日
  • 8月2日まで通いサービス中止、訪問は必要な利用者のみ、泊まりは健康観察が必要な利用者4人のみ対応とする
  • 利用者Aの濃厚接触者として職員12人、利用者25人の計37人が検査対象となり、職員1人、利用者6人の陽性を確認(最後の陽性確認)
  • 陰性の4人の入居者は施設内で健康観察を行うこととし、施設全体をイエローゾーンとして、交代で職員が出勤して対応した
  • 陰性となった職員も泊まりサービス対応をする職員5,6人以外は健康観察期間として自宅待機となった
11 7月
19日
  • 調理スタッフ3人と陽性者の家族にPCR検査を実施、陽性となった利用者家族1人の陽性を確認
13 7月
21日
  • 同一法人内の病院の感染認定看護師から事業所の感染対策・予防の指示を受ける
  • 市からPPEの支給があり、順次使用開始
  • 事業所による情報公開
15 7月
28日
  • 陽性となっていた職員1人、利用者4人が退院し8月2日まで自宅待機となる
25 8月
2日
  • ゾーニング解除
  • 保健所/事業所による収束
26 8月
3日
  • 事業所再開

対応の体制

  • 法人内で対策本部が設置され経営会議メンバーで構成されていた。

情報の収集・把握・共有

  • 陽性(疑い)者対応・感染拡大防止に関する情報:
    • 法人本部との情報共有。
    • 関連病院、保健所、行政の介護保険課と連携。
    • 同一法人の病院の医師からの指示、感染対策看護師の応援とレクチャーあり。
  • 意思決定・共有・指示のための情報:
    • 事業所長と管理職が対応して、法人本部、関連医療機関とのやり取りを優先。
    • 保健所・行政とのやり取りは、施設単独ではなく、法人を通して行った。

情報の周知・発信

  • 利用者、職員、関係機関等への情報の周知:
    • 利用者には陽性確認された利用者が出たことを知らせ、施設のケアマネが、利用者一人一人の家族に連絡を取って、陽性確認があったことを報告した。その後、家族に対しては健康観察のため、毎日電話で体温、体調等を聞いていた。
    • 職員へは、1人目の陽性者確認後、電話連絡にて通知した。
  • 外部への情報発信:
    • 保健所の公表から2日間、施設独自の公表の可否、方法等について検討して逡巡していたが、ニュース番組で施設の外景の写真が流され、すぐに特定された。区長が訪問し、住民に丁寧に説明するようアドバイスされ、有線放送で「地域内に陽性者が確認された」と情報を流すとともに、近隣の住宅を戸別訪問して、事情を説明した(ここから、誹謗中傷から激励へと潮目が変わった)。

利用者・入居者への支援と対応

  • 泊りサービスを利用中だった4人を除き、通所サービスは休止、訪問サービスは一部継続。常勤職員のみ2、3名体制で連泊中の利用者4人の介助にあたった。この利用者は病院から、施設内隔離が妥当という指示があった。
  • 地域のケアマネと相談して、利用者一人一人の家族に連絡を取って、陽性確認された利用者があったことを知らせた。その後、家族に対しては健康観察のため、毎日電話で体温、体調等を聞いていた。
  • 民家改修型という限られたスペースの中ではあるが、食事の個別対応、ゾーニング等、可能な限りの拡大予防並びに利用者への説明を行った。

職員の状況とフォロー

  • 当初、誹謗中傷の電話やFAXが続き応援職員を含めて対応に人手を取られた。併せて、職員の不安と心労が募っていったが、近隣の戸別訪問によって、激励・応援へと変化して、職員は一致団結して収束へ向かった。
  • 非常勤職員は自主的に有給休暇を取った者と、法人からの指示で自宅待機(2週間)した者がある。法人からの指示で待機した者には、基本給が支払われた。

医療機関、保健所・行政との連携・調整

  • 同一法人に病院があり、入院は病院の指示に従い泊りサービス利用中の4人はそのまま施設内隔離となった。ただし、保健所の指定する病院への入院も行われた。
  • 利用者Aの陽性判明翌日に、行政と保健所から連絡があった。

関係事業所・委託先等との連携・調整

  • 同一法人内の医療機関との連携により、入院加療。

感染防御資材等の調達

  • 市からアルコールの支給はあったが、病院への支給が中心であり、介護施設はギリギリの状態だったため、経営母体の法人からPPE等必要物品の支給があった(同一病院と施設では種類を分けて使用していた)。そのほかに携帯用のアルコールジェルは、法人から職員全員に支給され収束後も継続している。

事業支出・収入等への影響

  • 支出:
      PPE等の容易に費用が掛かったが、法人の会計なので、事業所単独では支出増加なし。他に、応援職員(電話・FAX対応含)の人件費についても、法人の全体会計の中で吸収されている。
  • 収入:
      小規模多機能は定額制であるため、表面だって収入が減少していない。
  • 資金繰り:
      母体の法人が全体会計しているため、施設としての資金繰りも苦労はしていない。

風評被害と対応

  • 被害の有無や状況:
      保健所による公表と、施設独自の公表との間にタイムラグ(2日間)があり、その間にニュース番組で外景が報じられたこともあり、誹謗中傷の電話とFAXが殺到した。その対応のために、施設外の管理者が応援に入った。
  • 対応:
      近隣には戸別訪問を行って事情と経過を説明し、安心してもらうことができた。これを機に、潮目が誹謗中傷から、応援・激励に変わり、職員は安どするとともに、更に感染防止対策に力を入れることとなった。

対応の振り返り

  • 通所の利用者Aが最初の感染者だったが、以前から発熱と解熱を繰り返していた際、積極的に検査に結び付けることができなかった。そのため、感染防止の空白期間が長く、クラスターを招いたと考えている。
  • 利用者Aの陽性確認から、ゾーニングして、介助する職員を限ったが、ゾーンを移動する際のガウンテクニックが十分でなかったこと、ゾーニング箇所から出たらすぐにスタッフルームで集まって話をしていたこと、振り返ると、知識と心構えが足りなかったと痛感する。
  • 利用者Aの陽性が確認されてから、3日目に施設独自に公表をしたが、その間にマスコミの報道等により、施設が特定され、誹謗中傷にさらされ、電話・FAX対応に追われた。初日に情報公開していたら、誹謗中傷は少なかったのではなかっただろうかと考えている。
  • 入院した利用者のうち、少なくても3人はADLが低下している。無症状、軽症であれば、入院よりも施設内隔離の方がQOLは保てるのではないかと考えている。基本的に治療の場である病院では、日常介護はないし、陽性者なので、リハビリテーションもままならない。
  • 最終的に、当該クラスターで再利用契約をしなかった利用者は1人であった。地域包括支援センターからの助言や紹介等があって、同事業所はよく頑張っていると、地域に共感が拡がっていった。再開にあたり、地域の区長と民生委員に「これからもうちは頑張っていくのでよろしくおねがいします」と挨拶したことで、更に信頼された。

陽性者対応の経験からの学び・教訓

  • 初動の遅れは様々な弊害をもたらす。①感染拡大を防止できない、②誹謗中傷にさらされる、③PPEは用意しすぎということはない、④保健所、行政との連絡・連携は早期に打ち合わせを含めてするべき、と考えている。
  • 振り返れば、最初の発熱時から利用を停止し、自宅隔離または即座にPCR検査を実施できればよかった。
  • COVID-19、感染のメカニズム、ゾーニングの意味等を再度学習する必要がある。

感染対応の経験を経て変更したこと・始めたこと

  • より現実的な、COVID-19、PPE、ゾーニングの勉強会を9月頃から開催している。
  • 職員の情報共有のためにLINE groupを活用するようになった。
インタビュー担当:鷹野和美・鎮目彩子
記事担当:鷹野和美・大村綾香・堀田聰子
医師からみたポイント:奥知久

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