アルファリビング松山よつば循環器科クリニック前(サービス付き高齢者向け住宅)
要約
愛媛県松山市のサービス付高齢者向け住宅(定員54人)で入居者3人・職員5人が陽性となった事例(2020年3月)。5日目から併設デイサービスを休業、保健所から濃厚接触者(全職員)を即日自宅待機とするよう要請があり、順次法人内の応援職員と入れ替え、一時応援職員のみでの運営となった。その後、新たな陽性者の発生に伴い、応援職員全員が濃厚接触者となったが、徐々に当初自宅待機となった職員が復帰して対応した。約1か月で入居者の居室隔離を緩和、約2か月で併設デイサービスを再開、その後は地域の感染状況を見て外部サービスの利用制限や面会制限を緩和していった。
法人概要
法人の経営主体 | あなぶきメディカルケア株式会社 |
法人全体の職員数 | 737人(2019年5月1日時点) |
法人全体の事業所数 | 32 |
実施事業 | 介護関連事業(介護事業、有料老人ホーム等の運営)、不動産管理業、広告事業他 |
ウェブサイト | https://www.a-living.jp/ |
拠点概要
所在地 | 愛媛県松山市 |
開設年 | 2014年 |
ウェブサイト | https://www.a-living.jp/ehime/yotsuba/ |
フロア | 利用者数(定員) | 職員数 | |
サービス付き高齢者向け住宅 | 1,2,3,4階 | -(54室・54人) | ー |
通所介護 | 1階 | -(15人) | ー |
新型コロナ陽性者等発生と対応の概要
陽性者数(うち死亡者数) | 8人(入居者:3人、職員:5人)、死亡者0人 |
濃厚接触者数 | ー |
検査実施方法 | 4月2日に職員、16~17日に全入居者のPCR検査、以降職員の復帰前に順次。 |
感染源・感染経路 | 最初に陽性となった入居者は新型コロナ集団感染が発生した松山市内での通夜・葬儀(3月22日・23日)に参加していた。 |
事業所が発生・収束とみなす日 | ー |
発生から収束までの休業や利用制限 | 併設のデイサービスを4月3日~5月31日まで休業。 |
事業所外からの応援(法人内外) | 法人内から応援職員を派遣。 松山市介護保険課が地域・関係団体に声かけ。 |
陽性者発生以前の状況・感染対策等
- 本事例以前の新型コロナにかかわる状況:2020年2月末から以下の対策を実施。
- 面会の制限:当面の間、入居者との面会を制限。やむを得ず、面会の必要がある場合は事前に申し出の上、受付で検温、手指消毒/手洗い・マスク着用、可能な限り居室ではなくロビーでの面会の協力を求める。
- 職員の対策
- 手指消毒、マスク着用、生活における健康管理・感染予防
- 37.5 度以上発熱がある場合は出勤停止
- 法人の定める感染症対策マニュアルに沿った業務遂行
- 感染リスクの高い「病院・イベント・満員電車」等には極力行かない
- その他:地域イベントや慰問は中止・延期。
新型コロナ陽性者発生状況と対応の経緯
病日 | 日程 | 項目 | 備考 |
1 | 3月30日 |
|
|
4 | 4月2日 |
|
|
5 | 4月3日 |
|
|
8 | 4月6日 |
|
|
10 | 4月8日 |
|
|
18 | 4月16日 |
|
|
34 | 5月2日 |
|
|
64 | 6月1日 |
|
|
71 | 6月8日 |
|
|
73 | 6月10日 |
|
情報の周知・発信
- 外部への情報発信:
- 5日目に法人HP(スタッフブログ)で新型コロナ感染症発生についての報告を掲載。以降随時状況報告を掲載。
- 県は新型コロナウイルスの感染の確認等に関する記者発表において順次施設名を伏せて報告。4月15日(17日目)には、前日に職員の陽性者が判明したことについて、「3日以降濃厚接触者として自宅待機をお願いしておりましたが、業務の都合上、仕事を休むことができず、4月7日までサービス付き高齢者住宅の入居者へ看護サービスを行っていたということでございます。」と発表。
- この翌日、法人HPで保健所からの濃厚接触者即自宅待機の要請と、やむを得ない措置としての申し入れ、保健所や市への相談を含む経緯と今後の対応、またメディア関係者と地域のみなさまへ とする以下のメッセージを掲載: 「一部の報道を受けて弊社職員への中傷被害が発生しています。現在も、ご入居者の生命と尊厳を守るべく現場でケアにあたっている職員がいます。これから自宅待機期間を経て職場復帰する職員もいます。いずれも高齢者に感染させてしまうかもしれない、自分が感染してしまうかもしれないというリスクを理解し、不安な気持ちでケアにむきあっています。どうか、感染者ご本人・ご家族や、ご入居者・当職員の人権尊重・個人情報保護にご理解とご配慮をお願いいたします。」
利用者・入居者への支援と対応
- 5日目より入居者全員を居室隔離、35日目に緩和。
- 5日目より63日目まで併設のデイサービスを休業。
- 地域の感染状況を考慮して、71日目以降に外部サービスの利用制限を自粛の要請に緩和、73日目には来館・面会制限を解除。
職員の状況とフォロー
- 5日目に保健所から濃厚接触者(全職員)即日自宅待機の要請を受けたが、法人内で入居者を受け入れ可能な施設・応援要員の確保が難しく、以下を申し入れ:
- 法人内他施設から応援職員体制を早急に整えること。
- 自宅待機対象職員を順次自宅待機させること。
- 応援職員配置完了までの間、PCR検査で陰性が確認された職員の勤務が必要であること。
- 保健所は「濃厚接触者の自宅待機の計画」や「応援職員の配置状況」等を毎日報告することを条件に申し入れに理解を示し、法人の責任において上記を進めた。
- 5日目までに濃厚接触者となった職員26人は5日目から順次自宅待機を開始、10日目には応援職員のみで運営開始となった。
- その後、自宅待機中の職員に続き、入居者の新たな陽性者が判明したことにより、19日目には応援職員全員が濃厚接触者となり、自宅待機の要請を受けることとなった。
医療機関、保健所・行政との連携・調整
- 4月3日(5日目)以降保健所と頻度高く連携、応援職員配置状況、入居者と自宅待機者の健康状況の報告相談、感染対策の指導を得る。
- 4月6日付(8日目)で市長と保健所長に緊急要望書を提出:
- 入居者受け入れ先の早期確保。
- 職員の就労制限の緩和等。
- 入居者・職員が感染した場合の対処に関するマニュアル作成。
- 入居者の医療的処置に関する継続的な支援体制の構築。
- 感染予防に必要な資材(マスク・消毒液等)の確保。
風評被害と対応
- 一部の報道を受けて職員への中傷被害が発生。4月16日・18日と法人HPにメディア関係者と地域のみなさまへ、5月3日はメディア関係者のみなさまへ としてメッセージを掲載。4月21日以降は地域のみなさまへ として励ましの声やサポートで勇気づけられていることの御礼のメッセージを掲載。
記事担当:鎮目彩子・大村綾香
■参考資料
アルファリビング 松山よつば循環器科クリニック前 スタッフブログ(2020年4月3日〜6月8日)
https://www.a-living.jp/ehime/yotsuba/blog/index.php?ymd=202004
https://www.a-living.jp/ehime/yotsuba/blog/index.php?ymd=202005
https://www.a-living.jp/ehime/yotsuba/blog/index.php?ymd=202006
「新型コロナウイルスの感染の確認(5事例目関係)に関する記者発表の要旨について」愛媛県 2020年4月17日
https://www.pref.ehime.jp/h25500/020417_2.html