ソフィア訪問看護ステーション元住吉(訪問看護)

要約

当初、本部に陽性者対応チームを設置、同チームが中心となって陽性者に対応を推進する方針をとっていたが、最終的にその機能を各ステーションで担えるようにするという目標があった。本事例は、利用者の要介護の家族が陽性となり、担当ケアマネジャーから対応の打診を受けたステーションが、ステーション内で収束させたケースである。資材備蓄や検査環境が整い、法人としての陽性者対応の知見が蓄積・共有されていたこと、ステーションにおいて日頃から感染対策を着実に行い、本音を話し合える環境を作っていたことなどから、スムーズに対応することができた。
※内容は2021年当時のものであり、現在の状況とは異なります。

医師からみたポイント

よかった点
  • 陽性判明後のスムーズな新規受入
    訪問看護の利用者の要介護の妻の陽性判明にあたり、ケアマネジャーからの相談を受けてすぐに対応を決め、階下の家族の意向も細やかに確認しながら訪問しました。
  • スタッフの心理的側面への配慮
    「不安」はコロナ対応において大きな要素です。平素から職員が気持ちを話し合える場づくりや声かけがなされていることは、着実な感染対策とあわせて職員の安心につながったのではないかと思います。
その他アドバイス
  • 法人内で経験やノウハウが蓄積され、広く共有されている様子がうかがえます。その知見が一人でも多くの人の豊かな生活の支援のために発信されていくことを願います。
インタビュー実施日:2021/2/26 インタビューご回答者:ステーション管理者 宮地様、本部 中川様

法人概要

法人の経営主体 ソフィアメディ株式会社
法人全体の職員数1,439人(2021年11月時点)
法人全体の事業所数82 (2021年11月時点)
実施事業訪問看護、居宅介護支援、通所介護
ウェブサイトhttps://www.sophiamedi.co.jp/

拠点概要

所在地神奈川県川崎市
実施事業訪問看護
併設サービスなし
開設年2010年
職員数19人(内訳:看護師9人、リハ職員10人)※内4人が非常勤 (2021年2月時点)
利用者数(定員)約270人※うち約8割が介護保険利用
ウェブサイトhttps://www.sophiamedi.co.jp/station/station-motosumiyoshi-2/

新型コロナ陽性者等発生と対応の概要

陽性者数(うち死亡者数) 利用者1人※新規受入(死亡者数:0人)
濃厚接触者数0人
検査実施利用者1人にPCR検査実施
感染源・感染経路 利用していたデイサービスで陽性者発生
事業所が発生・収束とみなす日1/30~2/13
発生から収束までの休業や利用制限
事業所外からの応援(法人内外)

陽性者発生以前の状況・感染対策等

  • 本事例以前の新型コロナにかかわる状況:
    • 本社の方針については「陽性者対応チーム」ページ参照
      • 今回のケース以前には利用者で陽性となった人が2人、濃厚接触者となった人は数名いた。
  • 感染対策の特徴:
    • 本社の方針については「陽性者対応チーム」ページ参照
        感染対策の強化は2020年3月頃から始めた。
        • 3チームに分け、チームごとに直行直帰を順番に行い、事業所の密を避けるようにした。
        • 対面の会議は、感染が落ち着いた2020年夏以降に15分のみ実施。社内SNS(ラインワークス)やスプレッドシートを使用して情報共有していた。
        • 職員、利用者ともに朝の体温測定で、37.5度以上、症状がある場合は休暇またはサービス中止とする。発熱ある場合は、フルPPEで訪問する。
        • 訪問前後は手洗い、消毒の徹底。利用者家族にも体調の情報共有の依頼をする。
        • 全利用者に対しマスク、グローブ、ゴーグル(利用者に対する配慮のため花粉症用を利用)着用。

新型コロナ陽性者発生状況と対応の経緯

病日 日程 項目 備考
2021年
1月
30日
  • ステーションの利用者の妻であるA(要介護2、認知症あり)が前日に利用したデイサービス(週3回利用)で陽性者が発生し、AはPCR検査を受ける。
  • 訪問看護の利用者である夫は、寝たきりで月の大半をショートステイで過ごし、在宅の時のみ、月1回程度訪問看護(健康観察目的)が入っていた。また、夫婦で生活支援を受けるため訪問介護も利用していた。
  • 夫は当時ショートステイ利用中であったため、濃厚接触者には該当しなかった。
1(第一病日) 2月
2日
  • Aの陽性判明(健康観察期間終了まで無症状)、無症状のため入院調整困難。
  • Aの担当ケアマネからステーションに陽性者の訪問(健康観察と一部保清対応)可能か連絡が入る。
  • 事業所の管理者が職員と相談の上(異論なし)、依頼を受けることを決定し、エリアマネージャ、本社対策本部へ報告。
  • 健康観察期間中に、2-3回/週目途で訪問する方向となる。

※陽性判明日が発症日とみなされていた。
  • Aが利用していたデイサービスが休止、普段入っている訪問介護事業者もサービス中止となり、訪問看護に問い合わせがあった。
  • Aの食の確保・保健師への連絡等は同一建物の下の階に住む娘が担当していた。
  • Aの夫(訪問看護利用者)はショートステイ利用期間を延長。
  • 日頃から陽性者対応の方法を本社と管理者間で共有していたため、スムーズに受入れ決定。
7 2月
8日
  • 事業所管理者が初訪問(15分滞在)。
  • もっと早く訪問したかったが、無症状でもあり、調整により8日初訪問に。
  • フルPPEセットを持ち、ビル階段の踊り場での着替えをしてよいかを家族に確認して訪問。
  • 使用済みPPEセットは回収袋にいれて家族が廃棄する旨了承を得た。
9 2月
12日
  • 直行直帰をするチームの中で、時間に余裕のある人が、健康観察期間解除日前日に訪問(フルPPE着用)。
12 2月
13日
  • 健康観察期間終了(収束)
  • 期間中無症状であったためPCR検査の実施はなし。
14 2月
15日
  • Aが利用していたデイサービス、訪問介護ともに再開

対応の体制

  • リーダー:事業所管理者

情報の収集・把握・共有

  • 陽性(疑い)者対応・感染拡大防止に関する情報:
    • コロナウイルス対策本部が情報収集を中心に担当。
    • 利用者、職員、同居家族が検査を実施した時点で対策本部の社内掲示板へ集約。
  • 意思決定・共有・指示のための情報:
    • 同上

情報の周知・発信

  • 利用者、職員、関係機関等への報告・周知:担当ケアマネジャーが実施。
  • 外部への情報発信:陽性判明後、ケアマネからの依頼で訪問開始したケースであるため、事業所からの情報発信はなし。

利用者・入居者への支援と対応

  • Aは、訪問介護がサービス中止となったことから、訪問看護が入るまで着替えや入浴はできず(玄関の鍵が閉められ外出できないようになっていた)、食事は階下の家族が届けて短時間滞在、という生活であった。そこで訪問看護が健康観察に加え、保清対応も一部担うこととなった。
  • Aは普段は活動的だったが、健康観察期間中はベッドで寝ていることが多かった。初回訪問で服薬困難のため高血圧となっていたこと、無症状であるものの、急変の可能性もあったため、週2,3回の訪問となった。
  • ステーションの他の利用者へのサービスを中断させないため、初回訪問は管理者が行い、同管理者は他の利用者の訪問を経てA宅訪問後は在宅勤務(翌日以降通常業務)とした。その後2回目の訪問は、直行直帰チームの休日出勤スタッフの訪問の最後にA宅を入れることで、通常のサービスを継続させた。
  • 訪問前後のPPE装備は近隣からの注目を避けるため、家族、利用者の了承を得て、居住していたビルの人目のつかない階段の踊り場で行うようにした。
  • 実際にはPPE装備し訪問するのに心が痛むほど、利用者は閉じ込められたような隔離生活を送っていた。

職員の状況とフォロー

  • 陽性者の依頼があった場合、2020年3月時点(第1波)では物資の不足や職員の不安もあり対応調整ができなかった。その後、物資が整うようになり、法人における陽性者対応の知見が蓄積され、職員のPCR検査実施が可能になってからは、対応職員を調整できるようになった。
  • 事業所内では、ストレスを溜めずに本音を話す、訪問に不安がある場合はなぜ不安なのかを尋ねることを大切にしており、そういった声かけで職員の意識も変わっていったのかもしれない。新型コロナに関する文献などの情報共有も行い、正しい知識を身に着けられるようにした。
  • 今回のケースの依頼があった際には、連絡を受けたときには事業所内にいた職員にはその場で確認、依頼を受けるかどうかを決める会議などは必要なかった。

関係事業所・委託先等との連携・調整

  • 担当ケアマネジャーが実施。

感染防御資材等の調達

  • 感染防御資材は、ステーションにかなりの備蓄があった。2020年GW頃までは不足していたが、県看護協会や本部から調達できていた。

事業支出・収入等への影響

  • 特になし(資材は備蓄を使用)

風評被害と対応

  • 特になし

対応の振り返り

    やっておいてよかったこと:
    • 普段から対策をしっかりとしておき、有事の際も普段の訓練通りやっていく。
    こうすればよかったこと:
    • より早く訪問できればよかった。
    • 訪問内容、頻度についてはそのままでよいが、滞在時間は長くできたらよかったかもしれない。

感染対応の経験を経て変更したこと・始めたこと

  • 始めたこと:
    • ステーション:陽性が確定してからの訪問は初めてだったため、振り返りを行い、事業所内で情報共有をした。利用者・職員の日常生活を維持できるよう、今回の経験を機に強化したチームワークを大切に、今後もさまざまな経験を積んでいきたい。
    • 本部:元住吉は長く勤務している職員が多く、管理者の対応も安定しており本部としてあまり関与しなかったが、夕礼で職員の知っていること・知らないこと、不安なこと、恐れていることなどの整理をしてもらっている。
ソフィアメディ株式会社陽性者対応チーム(訪問看護)
https://hitomachi-lab.com/research-info/cluster/13/
インタビュー担当:堀田聰子
記事担当:大村綾香
医師からみたポイント:奥知久

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