ソフィアメディ株式会社陽性者対応チーム(訪問看護)

要約

法人として82の事業所をもち、主に訪問看護を展開するソフィアメディ(職員数約1,400人)は、本社に陽性者対応チームを独自に設置し、陽性者に対する訪問が必要なケースについては、同チームの看護師が専属として訪問対応し、感染を最小限に抑える対策をとっている。各ステーションの利用者、職員、家族の感染状況を、掲示板を利用して集約し、訪問が必要な際には陽性者対応チームがステーションと関係各所の調整、情報収集、訪問を担い、陰転後に各ステーションへ引き継ぐ。実際の訪問では、生活援助を担っていた同居家族が陽性となり入院したことで一部の生活支援を行わなければいけなくなるなど課題があったが、担当していた看護師同士の信頼関係を基盤に、各ステーションの利用制限や新たな感染者を出すことなく収束となった。陽性者対応チーム設置のための財務コストや、小規模な事業体でも同様の措置をできるようにすることを考えると、法人内のみならず地域で連携し陽性者に対応していく専門チームを設置する必要性も示唆された。
※内容は2021年当時のものであり、現在の状況とは異なります。

医師からみたポイント

よかった点
  • 早期の組織的対応
    新型コロナ流行超早期に対策を開始(対策本部が2020年2月、陽性者対応チームが4月)したことにより、組織的な準備ができ、他社の訪問看護利用者の感染に伴う依頼にも、迅速に対応しました。
  • 指揮系統の確立
    本部、エリア長、エリア統括、現場の情報伝達と意思決定の流れを作っており、変化する状況に即応できる体制になっていました。
  • 陽性者対応のナレッジの集約
    陽性者対応専任チームをつくり、二次感染のリスクを下げるとともに、各ステーションで対応できるナレッジの蓄積を行いました。
その他アドバイス
  • 変動リスクの高い患者さんの観察には苦労されたのではないかと思います。家族への望ましい感染指導等を含め、訪問看護の強みが今後も生きる部分と考えられますので、経験をシェアしていただきたいです。
インタビュー実施日:2021/2/26 インタビューご回答者:コロナウイルス対策本部 中川様
エリアプロデューサー 赤平 トモエ様
陽性者対応チーム 渡辺様

法人概要

法人の経営主体 ソフィアメディ株式会社
法人全体の職員数1,439人(2021年11月時点)
法人全体の事業所数82 (2021年11月時点)
実施事業訪問看護、居宅介護支援、通所介護
ウェブサイトhttps://www.sophiamedi.co.jp/

新型コロナ陽性者等発生と対応の概要

陽性者数(うち死亡者数)2人(新規受け入れの利用者1人、その家族1人)(死亡者数:0人)
濃厚接触者数0人
検査実施利用者と利用者家族へ実施
感染源・感染経路 利用者友人との会食
事業所が発生・収束とみなす日10/6~10/22
発生から収束までの休業や利用制限
事業所外からの応援(法人内外)法人内(本社陽性者対応チームが問い合わせ対応から現場入りまで全て担当)

陽性者発生以前の状況・感染対策等

  • 本事例以前の新型コロナにかかわる状況:
    • 本社でコロナウイルス感染拡大に備えコロナウイルス対策本部(2020年2月)及び陽性者対応チーム(2020年4月)を設立。(詳細は「対応の体制」を参照)
  • 感染対策の特徴:
    • 事業所において以下を徹底する。
      • 可能な限り直行直帰とする。
      • 事業所内にパーテーションを設置する。
      • 職員同士の交流は極力避ける。
      • 消毒を頻回にする。 等

新型コロナ陽性者発生状況と対応の経緯

病日 日程 項目 備考
1(第1病日) 2020年
10月
6日
  • 10/2に会食した友人がPCR検査にて陽性と判明
  • A(ガン末期・50代、他社訪問看護を毎日利用)も発症し、PCR検査を実施
  • Aはこの時点ではソフィアメディの利用者ではなく、9日にクリニックからの依頼がきっかけで陽性者対応チームが入ることになった
  • Aの身の回りの世話は同居家族(Aの母、80代)が行っていた
4 10月
9日
  • Aの陽性判明
  • クリニックよりステーションに陽性者対応が可能かの連絡が入る
  • ステーションから陽性者対応チームへ引き継ぎ、対応の詳細が決まる
  • 陽性者対応チームが対象者に関する情報収集及び調整を行う
  • もともと入っていた事業者は濃厚接触者となり介入できないためソフィアメディに依頼がきた
7 10月
12日
  • 陽性者対応チームの看護師で訪問開始
  • PPEの物品は1セット利用者宅に緊急用に保管。その他は宿泊先ホテルから毎回持参
9 10月
14日
  • Aの同居家族が陽性と判明し入院となる。家族が担っていた生活援助に入れる訪問介護事業所をケアマネを通じて探すが見つからず、訪問診療と分担し訪問看護で担うこととなる
17 10月
22日
  • 保健所より隔離解除の判断
  • PCR再検査なし
  • 利用者Aはガン末期患者で基礎疾患の症状もあったため、コロナ陰転化の判断が困難なケースであった
19 10月
24日
  • 該当地域のステーションへ引き継ぎ、対応完了
  • 引継ぎ先のステーションにおいても10月末まではフルPPE対応し、11月以降通常対応とした

対応の体制

  • 陽性者対応チームの位置づけ:
    • 新型コロナウイルス対策本部のもとに陽性者対応チームを設置
  • チーム立ち上げの経緯:
    • 2020年2月に法人としてコロナウイルス対策本部を設置。エリア長が招集された。7人のエリア長に加え統括に2人を任命し、主にその2人が意思決定を行っている。
    • 陽性者対応について、各ステーションで対応しようとしていたが、利用者に陽性者が出た際に関係各所への説明や対応に追われ、ステーションのサービスを継続しながらの対応が困難であったため、陽性者対応の専門チームを立ち上げることとなった。
    • 第1波の収束(2020年6月頃)以降、最終的に各ステーションで対応できるように、陽性者対応チームが中心となって研修などを行っている。
  • 陽性者対応チームの編成:
    • 社内公募で11人集まる。公募の際の条件は以下の通り。
      • 所属は本社在籍とする。
      • 陽性者に対する訪問看護業務に加え、対策の企画業務なども含む。
    • 応募者選定の際の除外基準:同居家族に高齢者がいる・自身に持病がある・自身が65歳以上である
    • 待遇:自身が感染した場合の休業補償を100%支給、宿泊手当など
  • 対応方針:
    • 法人として、利用者(他事業所から依頼された利用者含む)または家族に陽性者が発生したとしてもサービスを中止するのではなく継続するという方針。
    • 利用者が濃厚接触者である場合には原則ステーション対応、陽性者の場合には陽性者対応チームが対応する。
  • 対応方法:
    • 各事業所の陽性者に関する情報を、利用者、職員、同居家族がPCR検査を実施した時点で社内掲示板にて集約。
    • 投稿された情報に基づき(またはステーションから依頼相談によって対応開始の場合もあり)、主にエリア長が疫学調査を実施、その調査に基づきエリア統括の2人が対応の判断、指示を行う。
    • 陽性者対応の依頼があった時点で、コロナウイルス対策本部及び陽性者対応チームが中心となり対応ステーションの選定、各関連機関との調整を行い、サービスの詳細が決定次第、陽性者対応チームの看護師がかかりきりでケアを行う。
    • 陰転化し、訪問期間が終了する際には保健所と連携し、各機関(対応ステーション含む)への引継ぎを行う。
    • 陰転後の引き継ぎについて
      • 陽性者対応チームとステーションとのコンセンサスをエリア長がとり、ステーションで対応する上での不安や意見を吸い上げ、対応を一緒に検討した。
      • エリア長が陽性者対応チームの訪問中からどのような状況かを一元化して伝えるようにした。
      • 引き継ぎではオンライン会議ツールを使いながら、実際に訪問した陽性者対応チームの看護師が移行先の看護師に引継ぎを行い、現場でやりとりしたチャットやサマリをステーションでも閲覧できるようにした。
      • 陰転化の判断についても検査はしていないが、今回のケースはもともと微熱を繰り返す利用者であり、発症して10日以上経過し、72時間以上、症状が変わりないということで、隔離解除の判断を保健所及び医師が行い、その内容をステーションに共有して引き継ぎ了承となった。引継ぎ後1週間はステーションにてフルPPE対応し、その後通常対応となった。

情報の収集・把握・共有

  • 陽性(疑い)者対応・感染拡大防止に関する情報:
    • コロナウイルス対策本部が情報収集を中心に担当。
    • 利用者、職員、同居家族が検査を実施した時点で対策本部の社内掲示板へ集約。
  • 意思決定・共有・指示のための情報:
    • 同上

情報の周知・発信

  • 利用者、職員、関係機関等への報告・周知:
    • 陽性者対応チームに依頼がきて引き受けが決定次第速やかに実施
  • 外部への情報発信:
    • 速やかに実施(電話・FAX・HP)

利用者・入居者への支援と対応

  • 他事業者が濃厚接触者となり撤退し、陽性者対応チーム及び訪問診療のみでケアに入らなければいけなくなったため、平日夜間と日曜日だけは訪問診療で対応、平日及び土曜日の昼間を訪問看護で対応した。
  • 10/14に同居家族の陽性が判明し入院が決まった後は、掃除・洗濯などの生活援助についても訪問看護で担わなければいけなくなった。家事については可能な範囲で柔軟に対応した。
  • 訪問先のゾーニングは訪問する担当看護師で決定し、玄関レッドゾーンの間に清潔エリアが設けられた。
  • 体調管理については、基本的に毎朝検温を実施し、管理者が集まる本社付の朝礼等で報告していた。

職員の状況とフォロー

  • 陽性者対応チームの訪問期間中、対応する看護師は近隣のビジネスホテルに宿泊し、訪問時のみ外出、事務作業はホテル客室内で行った。
  • 今回訪問を担当した看護師2人は、以前より交流のある管理者同士であり信頼関係が構築できていたことが対応中の励みにもなった。訪問期間中2人が顔を合わせることはないが、オンライン会議ツールやチャット機能でコミュニケーションをとっていた。

関係事業所・委託先等との連携・調整

  • 陽性者対応の依頼を受けてから、対策本部長が依頼元との窓口を担い、対応可能性を判断の上、利用者に関する情報を関係事業所から収集し整理する。
  • その後、エリア長が関係各所との調整を行い、実際に訪問する看護師へ情報を一元化し引き継ぎをする。

感染防御資材等の調達

  • マスクについては対策本部長のつながりで、マスク工場を運営している先から十分な量を調達できた。
  • その他ガウンやN95マスク、パルスオキシメーターなどは不足し、対策本部が調達に奔走した。

対応の振り返り

  • 今回陽性になった利用者は、ガン末期でもともと発熱などの症状があるため、酸素飽和度が95を下回ったら、保健所が入院調整をするようにコミュニケーションはとっていたものの、何をもって、モニタリングをしていけばいいいか、明確に決めきれなかったなといったところがある。難易度の高いケースであった。
  • タイミングは難しいものの家族への感染指導もできたらよかったのかもしれない。
  • PPEの資材を陽性者対応チームが潤沢に準備してくれており、物資不足で困ることがなかった。

陽性者対応の経験からの学び・教訓

  • 実際に訪問する前に把握している利用者に関する情報が不十分で、訪問後に戸惑うことが多かった。訪問前には月曜から金曜までの5日間と聞いていたが、実際には土日は誰も訪問しないことがわかり、点滴の方法を本人に指南するなど予想外の対応が必要となった。実際に訪問する看護師として医師との意思疎通が丁寧にできていたらよかった。
ソフィア訪問看護ステーション元住吉(訪問看護)
https://hitomachi-lab.com/research-info/cluster/12/
インタビュー担当:堀田聰子・雨澤慎悟
記事担当:大村綾香
医師からみたポイント:奥知久

ひとまちラボトップページへ

お問い合わせ

プライバシーポリシー