地域連携
介護事業所間、医療と介護、自治体・保健所等、さらに地域住民等を含めて有事の備え、新型コロナを手がかりにした学びあい等を行っている医療・介護・福祉職や自治体職員等にうかがいました(15事例)。
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医療者ネットワークによる介護施設クラスターの早期検知と早期介入
沖縄県では、介護現場で新型コロナ陽性者が発生した時に、迅速に医療者が支援に入る体制ができている。医療者の有志ネットワークが、平時の顔が見える関係を基盤に、介護施設等における陽性者発覚から24時間以内に保健所の介入前に感染対策指導に入るというもので、医療圏ごとに対応がはかられ、県がこれを支援している。現場から得られた教訓は、県や地区医師会主催の研修会等で広く共有され、在宅医療・介護連携推進事業を活用して、有事の初動を早め、対応力を高める取組みも行っている。
居宅の要介護者が新型コロナ陽性になったら、入院対応を基本としつつ、どうしても入院が難しい場合には訪問看護を中心とするフォローを想定、さらに居宅で濃厚接触者となった要支援者にはプレハブ療養施設を設けている。今後は、新型コロナと共生する介護現場での具体的な対応の在り方を模索していく必要があり、動き始めたところである。
一連の対応には、医療・介護・福祉現場と行政をつなぐことのできる医師が県立病院、地区医師会におり、行政でも立場を持つことで、地域のニーズに即して現場が動きやすい仕組みづくりを重ねてきたという背景がある。
訪問看護の支援・事業継続を目指す生野区ナース会の協力システム
生野区ナース会では、新型コロナが広がる中、訪問看護ステーションが活動休止になった場合でも、地域のステーション同士が連携して、ケアを必要とする人の訪問看護を途絶えさせず、休止後の再建を助け合うための協力システムを立ち上げた。
立上げの中心を担った平山さんは2020年にステーションを開設したばかりだったが、ナース会でアンケートを実施して、同じ危機感をもつステーションが多く存在することを明らかにしながら、仲間を巻き込みシステム構築を進めていった。
災害対策を想定した地域の区分けを活用して、各ステーションの強みを生かした役割分担がなされ、在宅医療介護連携コーディネーターを通じて医師会の協力も得られ、スピーディにシステムづくりが実現した。
協力システムの運用を通じて、ナース会のメンバーから、本当に役立つシステムだと実感してもらうことができ「システムがあって何かあったときに助けてもらえるから安心して訪問ができるようになった」といううれしい声をもらっている。
第2波に備えて現場発で立ち上がった「とやま安心介護ネットワーク」
とやま安心介護ネットワーク(TAKN)は、新型コロナ拡大に対する危機感をきっかけに、介護と医療の連携、高齢者のADL・QOLの維持向上、介護事業所や職員を誹謗中傷・風評被害から守ること等を目指して、現場発で生まれた多職種ネットワークだ。
「感染拡大を最小限に食い止め、サービスを止めない!」を合言葉に、LINEやZoomを使った相談・情報交換ができる場の提供、事業所での創意工夫を共有するための施設訪問や感染症対策の知識を広げる伝達研修を地道に続け、商店街等の感染対策にかかわる「まちなかコロナ対策チーム」にも参加するなど、介護領域を超えて地域にもその活動の場を広げている。感染予防と高齢者・職員のQOLの両立を目指し、新しいケアのあり方と地域づくりの模索を重ねるTAKNについて、コアメンバーの3人にお話をお聞きした。
多職種連携コミュニティチームによる新型コロナ対応
青森県八戸市で家庭医として地域医療に携わっている医師の小倉和也さんは、地域住民が安心して医療・介護を受けられるための環境を目指し、地域連携の基盤作りに邁進してきた。
自身が理事長を務めるNPO法人Reconnectでは、病院や薬局、訪問看護ステーションや介護事業所・施設が連携するコミュニティチーム『Connect8(コネクトエイト)』を立ち上げた。2018年度からは八戸市の在宅医療・介護連携推進事業を受託し、オンライン診療や情報連携、オンライン研修などの取り組みを進める中で、多くの関係者を巻き込みながらこのネットワークを育て上げてきた。 新型コロナウイルス感染症が広がる中で、こうして築き上げてきた地域連携の基盤とコミュニティチームが大きな役割を果たすことになる。取り組みとしては各機関の意思統一を図るための意見交換の場を設けたり、訪問看護ステーションの応援体制を作る、地域住民への教育・情報提供活動など様々だ。
一見先駆的な取り組みのように見えるが、実は平時から多職種連携やICT連携の基盤を丁寧に作り上げてきた成果とも言える。感染症に備えながら日頃の医療介護を継続し、地域に残る課題に一つずつ向き合いながら、新しい地域連携の取り組みを模索し続けている。
訪問介護事業所の緊急時における支援継続システム~保険者の立場から
流山市では、訪問介護事業所が新型コロナの影響等で休業を迫られた際に、利用者への支援の継続と事業運営の継続を目的とする相互協力システムが2020年11月に始動した。
保険者としてこれに参画する流山市健康福祉部長は、同システムの立ち上げができた要因は、訪問介護事業部会が主体的に動いたことと指摘する。部会がやりたいことの方向性を示したうえで、一緒に考えて欲しいというスタンスだったことから協力して動きやすかったという。
システムを動かした実績はまだないが、鍵となるトリアージ表の記載の質の検証、より多くの訪問介護事業所にシステムに参加してもらうこと、同様のシステムが訪問看護や入所系施設等にも広がることに期待を寄せる。さらに、新型コロナだけでなくオールハザードでの地域全体としてのBCPを考えていきたいと語った。この他、流山市が行ってきた新型コロナにかかわる介護事業所を対象とした取組みについても伺った。
介護福祉現場を地元産ガウンで支える「STOP!コロナクラスター」プロジェクト
広島県福山市の脳神経センター大田記念病院では2020年1月末頃から不足し始めた個人防護具(PPE)を調達するために、地縁を頼りにオリジナルマスクの製作に着手。法人職員や地元企業の協力を得て、市内や県内に納品できるオリジナルマスクを完成させ、「無いものは作る」という成功体験を得た。
4月に入ると各地でクラスター発生の知らせが報じられるようになる。市内でのクラスター発生への危機感から、特に介護現場の感染症対策を充実させることが結果的に医療崩壊を防ぐ防波堤になるという認識が強まっていった。しかし、介護現場は大きな感染症の脅威にさらされた経験は乏しく、十分な感染症対策ができていないという課題があった。
これらの背景から、大田記念病院はじめ市内の様々な団体や企業が協力し、地域活動に取り組む認定NPO法人福山シンフォニーオーケストラやNPO法人えがおのまちづくりステッキなどが主体となってクラウドファンディングによる資金調達を行い、介護現場へ必要な知識と必要な物資の一つである地元産プラスチックガウンを提供するプロジェクトが開始された。