地域連携
介護事業所間、医療と介護、自治体・保健所等、さらに地域住民等を含めて有事の備え、新型コロナを手がかりにした学びあい等を行っている医療・介護・福祉職や自治体職員等にうかがいました(15事例)。
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現場の困りごとに即応して対策を展開するちとせの介護医療連携の会
北海道千歳市で活動する特定非営利活動法人ちとせの介護医療連携の会は、2020年4月、市内に新型コロナが広がる中、主要メンバーによるLINEグループや事業所アンケートを通じて地域の声を集め、ホームページに「新型コロナウイルス感染症特設ページ」を設け、感染対策や公的機関からの情報提供、感染防御資材の入手が困難な時期には物資支援の呼びかけ、介護保険サービス事業所の運営情報等を集めて公開していった。
2020年7月からは、連携の会として千歳市から新型コロナウイルス感染症対策専門講師派遣及び相談体制強化業務の委託を受け、事業所への訪問支援や、感染症対策ハンドブックの配布などへと活動を広げた。さらに、感染症が発生した際には北海道からの人的・物的支援が届くまでに数日のタイムラグが想定されることから、その間、地域の事業所が連携・協力するシステムが必要だと、2020年11月には「感染症発生に関する連携協定」を立ち上げている。
市内全高齢者施設を対象にレッドゾーンに入れる「北九州市介護版DMAT」
福岡県北九州市では、比較的早い時期に市内でのクラスター発生が報じられ、市内の高齢者福祉事業を営む法人が集まる北九州高齢者福祉事業協会でも危機感が募っていた。
同協会特養看護部会リーダーの真鍋さんは、北九州市新型コロナ対策専門官の川原さんと出会い、介護版DMAT(災害派遣医療チーム)構想の提案を受ける。すぐに特養部会部会長の木戸さんに相談し、同協会事務局長の奥野さんらと構想を進め、協会会員施設職員からレッドゾーンでの応援派遣も可能とする19人の登録を得た。これにより北九州市と「感染症発生時における職員の派遣に関する協定」を締結できた。
介護版DMATの稼働実績はないものの、有事を想定して、介護版DMATメンバーはもちろん、受け入れ側となる施設にも共通の研修や動画を広げることで、効果の底上げを図っている。また、DMATメンバーの交流を深めるためのICT活用も模索している。
第2波に備えて現場発で立ち上がった「とやま安心介護ネットワーク」
とやま安心介護ネットワーク(TAKN)は、新型コロナ拡大に対する危機感をきっかけに、介護と医療の連携、高齢者のADL・QOLの維持向上、介護事業所や職員を誹謗中傷・風評被害から守ること等を目指して、現場発で生まれた多職種ネットワークだ。
「感染拡大を最小限に食い止め、サービスを止めない!」を合言葉に、LINEやZoomを使った相談・情報交換ができる場の提供、事業所での創意工夫を共有するための施設訪問や感染症対策の知識を広げる伝達研修を地道に続け、商店街等の感染対策にかかわる「まちなかコロナ対策チーム」にも参加するなど、介護領域を超えて地域にもその活動の場を広げている。感染予防と高齢者・職員のQOLの両立を目指し、新しいケアのあり方と地域づくりの模索を重ねるTAKNについて、コアメンバーの3人にお話をお聞きした。
地域密着型サービスと行政の連携で進める「命と暮らしを守る」新型コロナ対策
鹿児島県霧島市地域密着型サービス事業者連合会では、新型コロナ対策として、①感染予防事業所応援プロジェクト、②介護サービス応援職員派遣の2つを霧島市と共同で進めている。
①は、市内の地域密着型サービス事業所における感染症対策の底上げとともに、スタッフ・事業所のみで不安を抱え込まない関係づくり、感染予防対策について地域で考え取り組んでいく風土づくりを目的としており、希望事業所に霧島市地域包括ケア・ライフサポートワーカー(LSW)の認定を受けた看護師が出向き、スタッフや利用者に感染予防研修を実施している。
②は、陽性者が発生しても利用者への支援・事業所の運営を継続できるよう、陽性者が発生した事業所が市に職員派遣を依頼し、連合会が協力施設の調整を行う仕組みであり、派遣協力施設に継続的に研修を行うことで、市内の事業者間の相互理解や仲間づくりにもつなげている。
こうした取組みを支えるのは、コロナ禍でも変わることのない、高齢者の命を守り、一人ひとりの望む暮らしを本人・地域とともにつくる介護の使命感である。
訪問介護事業所の緊急時における支援継続システム~保険者の立場から
流山市では、訪問介護事業所が新型コロナの影響等で休業を迫られた際に、利用者への支援の継続と事業運営の継続を目的とする相互協力システムが2020年11月に始動した。
保険者としてこれに参画する流山市健康福祉部長は、同システムの立ち上げができた要因は、訪問介護事業部会が主体的に動いたことと指摘する。部会がやりたいことの方向性を示したうえで、一緒に考えて欲しいというスタンスだったことから協力して動きやすかったという。
システムを動かした実績はまだないが、鍵となるトリアージ表の記載の質の検証、より多くの訪問介護事業所にシステムに参加してもらうこと、同様のシステムが訪問看護や入所系施設等にも広がることに期待を寄せる。さらに、新型コロナだけでなくオールハザードでの地域全体としてのBCPを考えていきたいと語った。この他、流山市が行ってきた新型コロナにかかわる介護事業所を対象とした取組みについても伺った。
訪問介護を軸とする地域づくりと緊急時の支援継続に向けた協力体制
2020年11月、流山市シルバーサービス事業者連絡会 訪問介護事業部会は、流山市とともに、訪問介護事業所が新型コロナの影響等で休業を迫られた際に、利用者への支援の継続と事業運営の継続を目的とする相互協力システムを立ち上げた。
まず、2020年4月に訪問介護部会でアンケートを行い、利用者・スタッフ等が感染した場合の支援・事業継続意向、感染に対する知識や技術への不安などの実態を明らかにし、市に協力を働きかけた。6月には部会でシステムの立上げを決定してオンライン研修を実施。その後、市役所も参加して医療職による感染対策研修、飛沫可視化に基づく民家での多職種研修、他地域の経験に学ぶ研修を重ねつつ、最初から研修に参加した8事業所を中心にシステム構築の検討を進めた。
現在では20事業所がシステムに参加している。今後は、部会に所属していない事業所に対して、部会およびシステムへの参加を促していくとともに、自宅療養する陽性者を支援できる仕組みづくりにも取り組んでいきたい。
介護福祉現場を地元産ガウンで支える「STOP!コロナクラスター」プロジェクト
広島県福山市の脳神経センター大田記念病院では2020年1月末頃から不足し始めた個人防護具(PPE)を調達するために、地縁を頼りにオリジナルマスクの製作に着手。法人職員や地元企業の協力を得て、市内や県内に納品できるオリジナルマスクを完成させ、「無いものは作る」という成功体験を得た。
4月に入ると各地でクラスター発生の知らせが報じられるようになる。市内でのクラスター発生への危機感から、特に介護現場の感染症対策を充実させることが結果的に医療崩壊を防ぐ防波堤になるという認識が強まっていった。しかし、介護現場は大きな感染症の脅威にさらされた経験は乏しく、十分な感染症対策ができていないという課題があった。
これらの背景から、大田記念病院はじめ市内の様々な団体や企業が協力し、地域活動に取り組む認定NPO法人福山シンフォニーオーケストラやNPO法人えがおのまちづくりステッキなどが主体となってクラウドファンディングによる資金調達を行い、介護現場へ必要な知識と必要な物資の一つである地元産プラスチックガウンを提供するプロジェクトが開始された。