みんコロラボ 〜みんな、新型コロナ対策どうしてる?〜

現場の困りごとに即応して対策を展開するちとせの介護医療連携の会

要約

北海道千歳市で活動する特定非営利活動法人ちとせの介護医療連携の会は、2020年4月、市内に新型コロナが広がる中、主要メンバーによるLINEグループや事業所アンケートを通じて地域の声を集め、ホームページに「新型コロナウイルス感染症特設ページ」を設け、感染対策や公的機関からの情報提供、感染防御資材の入手が困難な時期には物資支援の呼びかけ、介護保険サービス事業所の運営情報等を集めて公開していった。

2020年7月からは、連携の会として千歳市から新型コロナウイルス感染症対策専門講師派遣及び相談体制強化業務の委託を受け、事業所への訪問支援や、感染症対策ハンドブックの配布などへと活動を広げた。さらに、感染症が発生した際には北海道からの人的・物的支援が届くまでに数日のタイムラグが想定されることから、その間、地域の事業所が連携・協力するシステムが必要だと、2020年11月には「感染症発生に関する連携協定」を立ち上げている。

  • 北海道千歳市
  • 在宅医療・介護連携推進事業
  • 新型コロナウイルス感染症特設ページ
  • 事業所アンケート
  • クラスタ―発生
  • 感染対策研修
  • ハンドブック作成
  • 感染対策の訪問支援
  • 職員派遣
  • 職員派遣

詳細

インタビュー実施日:2021年1月19日


この記事を読んでもらいたい方

  • 在宅医療・介護連携支援センター関係者,
  • 介護従事者,
  • 医療従事者,
  • 自治体担当者,
お問合せ先の担当者、連絡先特定非営利活動法人ちとせの介護医療連携の会
千歳市在宅医療・介護連携支援センター
担当 坂本 大輔
Tel:0123-49-3330
E-mail:chitoserenkei.npo@gmail.com
関係施設・関係者特定非営利活動法人ちとせの介護医療連携の会 会長
ちとせの介護医療連携カレッジ 学長
医療法人社団古泉循環器内科クリニック 理事長/院長・医師
古泉 圭透 さん特定非営利活動法人ちとせの介護医療連携の会 在宅連携部会
向陽台ファミリークリニック 院長・医師
中島 徹 さん特定非営利活動法人ちとせの介護医療連携の会 事務局長
千歳市在宅医療・介護連携支援センター センター長
キャリアコンサルタント・社会福祉士・介護支援専門員
木下 浩志 さん
お話を聞かせていただいた方特定非営利活動法人ちとせの介護医療連携の会 事務局
千歳市在宅医療・介護連携支援センター 相談員
精神保健福祉士
坂本 大輔 さん

北海道千歳市で活動する特定非営利活動法人ちとせの介護医療連携の会では、2020年4月、市内に新型コロナが広がる中、いち早く地域の声を集め、介護・医療従事者の支援や情報提供に取り組み、有事に対応できる体制構築を模索してきた。ニーズに即応する活動の展開について同会事務局で、千歳市在宅医療・介護連携支援センター相談員の坂本大輔さんから話を聞いた。

特定非営利活動法人ちとせの医療介護連携の会とは

ちとせの医療介護連携の会(以下、連携の会)は、2016年に千歳市内のケアマネジャー、病院のソーシャルワーカー、介護職員などの有志が、職種や法人の垣根を越えて勉強していこうと発足した団体だ。高齢者等の在宅ケアでは地域の多職種・多業種の連携が必要になることから、勉強会でも他の業種も巻き込んで介護や医療について幅広く学んでいくとともに、運動会や飲み会などのレクリエーションを通じて楽しみながら顔の見える関係を作り、仲間のつながりを深めていった。多職種勉強会は「ちとせの介護医療連携カレッジ」(現在は臨時休講中でWebによる特別講義を実施)など継続して行っている。

連携の会は2017年1月にNPO法人化、2018年4月からは千歳市から「在宅医療・介護連携推進事業」を受託して、「千歳市在宅医療・介護連携支援センター」の運営も開始した。

連携の会が目指す「ちとせクオリティ」

『SPECIAL QUALITY』

どこの地域にもない千歳の特別な介護と医療の連携

『UNDERSTAND FEELING』

一人ひとりがお互いの立場や考えを理解し尊重

『GOOD JOB』

高度な事例に対応でき、地域一丸となって良質なサービスを提供

特定非営利活動法人ちとせの医療介護連携の会ホームページhttps://chitose-renkei.com/

連携の会の主な活動

連携の会では、地域包括ケアシステムの推進を目的として、①医療と介護が必要になっても安心して生活することができるまちづくりとしての在宅医療・介護連携推進事業、②医療・介護の人材確保と定着(介護グランプリ、就職相談会、お仕事説明会等)、③在宅医療や介護保険等にかかわる市民啓発を3本柱として、これらを一体的に考え、効果的に結びつけていこうと活動している。専従スタッフは坂本さんと事務局長(センター長)の木下さんの2人である。

2020年春 市内で感染が広がり連携の会事務局が動き出す

千歳市内在住者が初めて新型コロナに感染したのは2020年2月。4月にはグループホーム、その後すぐに病院やサービス付き高齢者向け住宅で集団感染が発生した。

その頃から、事務局長と坂本さんの2人で、連携の会として日頃お世話になっている皆さんに何かできることはないかと考え、①いつも以上のスピード感、②NPO法人という特性から、お金のかかるアクションをすぐに起こすことは難しくても、まずは現場の協力でできることを、③実際に現場で何に困っているのか、とにかく情報を集めること、を大切にしようと決めた。

主要メンバーとのLINEグループで現場の意見や情報を集約

2人は、市内の連携の会の関係機関に協力を求め、会長の古泉先生はじめ、医師・歯科医師・薬剤師・ケアマネジャー・地域包括支援センター職員等、連携の会でいろいろな企画を行う際の多職種のコアメンバー15人でLINEグループを作った。LINEグループでは、事務局からメンバーに向けて、今何に困っているか、どんなこと・モノが必要か、何から手を付けたらいいか、など質問を投げながらやりとりを重ね、現場の意見や情報を集約していった。

「新型コロナウイルス感染症特設ページ」を開設

そして連携の会のホームページに「新型コロナウイルス感染症特設ページ」を開設し、LINEグループから声があがった情報を収集して、市内の介護・医療・福祉関係者に向けて発信していった。

一番初めに作ったのは「介護保険事業所・医療機関・福祉機関 お役立ち情報」で、感染対策や厚生労働省や保健所からのさまざまな情報へのリンク、衛生用品などの情報をまとめて公開していった。サイト立ち上げ当初からのコンテンツは、その他に情報交換のための「何でも掲示板」(現在は使用せず)がある。支援物資の募集の呼びかけなど限られたものだったが、坂本さんは、自作のホームページのため、タイムリーに情報発信できたと振り返る。

支援物資(感染防護具・衛生用品)募集の呼びかけ

当時、LINEグループから多く聞かれたのが感染防護具・衛生用品の不足で、3月の第1波でクラスターが起きた事業所でも衛生物品が全く手に入らず非常に困ったという。そこで連携の会のホームページ上でも感染防護具や衛生用品の支援の呼び掛けたところ、市内だけでなく市外や道外を含め42の団体や個人から、マスク/ガウン(手作りを含む)、使い捨て手袋、消毒液、ウェットティッシュ、ペーパータオルなどが寄せられ、クラスターが発生した事業所にこれらの物品を提供することができた。

衛生用品が足りない状態が生じることに備え、支援物資の一部は備蓄している。

2020年4月下旬 事業所アンケートの実施

4月23日から、市内51の介護保険サービス事業所にGoogleフォームを使ったWebアンケートへの協力を呼びかけ、45事業所から回答を得た。アンケートでは、以下の項目について事業所の状況やニーズを確認した。

① サービスの運営状況(通所系・訪問系)(休⽌している場合は休止理由)

② ⼈材の応援協⼒の可否(職員派遣の可能⼈数・派遣できない理由)

③ 衛生用品支援の可否(提供可能な衛⽣⽤品やその量)

④ 食事の提供有無 ※クラスター発生施設で厨房の機能不全が発生した場合

⑤ その他、ご意見

このアンケートの質問項目は、連携の会のコアメンバーからの意見と、2018年の北海道胆振東部地震以降、災害に関する連携協定を結び非常訓練など行っているノウハウから必要と考えたものを加えて作っていったという。

各事業所からの回答には、新型コロナという誰も経験したことのない状況下での不安や深刻な衛生用品不足(当時)、人材確保の難しさなどの困難を訴える声が多くあったが、人材応援や物資の支援について、できる限り協力したいという意見もみられた。アンケート結果を反映して特設サイトでは、介護保険サービスの運営状況や、従業員の雇用管理に関するコンテンツを追加していった。

介護保険サービス運営状況について

4月に市内のグループホーム等でクラスターが発生すると、通所系事業所の多くが5月中旬頃まで営業自粛となり、LINEグループの居宅介護支援事業所や地域包括支援センターのケアマネジャーからは、事業所の運営状況の把握が困難という声が聞かれた。そこで、営業休止中の事業所に直接問い合わせて再開予定などを聞き取るとともに、事業所アンケートでも運営状況に関する情報収集を行い、速やかに特設サイトに「事業所の運営状況」という項目を設けて、情報を共有していった。

従業員の雇用管理(雇用関係の助成金制度など)

アンケートでは従業員の雇用保障などに関する意見や質問も多かったので、特設サイトの「お役立ち情報」の中に「従業員の雇用管理」の項目を作って、事業所の休止や利用者受け入れの縮小などで収益が減少した場合の従業員の雇用維持に関する助成金、労災実務などの情報を落とし込んでいった。

2020年5月~
クラスター発生施設の経験を活かした対策の情報共有

「万が一事業所内で新型コロナウイルス感染症が発生(疑い)した場合どうする?」は、市内の施設でクラスターが発生した際に派遣された国立感染症研究所のクラスター対策班が行った指導や助言の内容を、連携の会のメンバーでもあり現場対応にあたった向陽台ファミリークリニックの中島先生が「クラスターは本当につらい状況だったので、そういう事業所が増えないように」と自らまとめて連携の会に提供してくれたものだ。

文字だけでは情報が分かりにくいのではという意見もあり、のちに連携の会のメンバーの協力で関連した感染対策の動画を作って「介護事業所必見!最低限必要な感染対策動画」としてホームページに掲載していった。

特定非営利活動法人 ちとせの医療介護連携の会ホームページ
「新型コロナウイルス感染症特設ページ」よりhttps://chitose-renkei.com/covid-19.html

2020年7月~
千歳市より「新型コロナウイルス感染症対策専門講師派遣及び相談体制強化業務」を受託

連携の会では、当初新型コロナに関する活動には特段予算がない状態で、情報収集やホームページでの情報共有、アンケートなどを行ってきたが、7月に市から「新型コロナウイルス感染症対策専門講師派遣及び相談体制強化業務」を委託され、事業費が得られたことから、感染症対策に関する活動の幅が大きく広がった。

事業内容

(1) 介護・障害福祉事業所への感染症対策の訪問支援

集団感染を防止するため、市内の介護及び障害福祉事業所を訪問して感染症対策の支援を行うもので、連携の会会長の古泉先生と地域包括支援センターの保健師の2人が、新型コロナ対策についての現場の疑問や質問にアドバイスをしたり、困りごとの相談にのったりしている。

写真提供:特定非営利活動法人ちとせの医療介護連携の会

(2) 事業所等からの相談窓口の設置と情報発信・WEB研修

サービス事業所や医療機関からの相談窓口の設置、オンラインによる研修会や意見交換会の実施、その他情報収集や情報発信を通じて、新型コロナに対する医療介護連携の推進をはかっている。

(3) 感染症対応ハンドブックの作成及び配布

「感染症対策ハンドブック」は、もともと連携の会の特設サイトに「万が一事業所内で新型コロナウイルス感染症が発生(疑い)した場合どうする?」として掲載していた項目別に、感染症への対応を紹介したコンテンツの情報に、関連する「介護事業所必見!最低限必要な感染対策動画」コンテンツのQRコードを追加して冊子にまとめたものだ。冊子は、約100か所の市内の介護保険サービス事業所・障害福祉サービス事業所等に勤務するスタッフに配布した。

<主な内容>

  • 感染対策/装備
  • 装備の着脱
  • 物品の使い方/節約方法
  • 利用者居室の対応
  • 濃厚接触者
  • 利用者の送迎
  • 消毒液の使用
  • 業務の整理/合理化
  • 居室の取り扱い
  • 病気の再燃
  • 介助
  • 口腔ケア
  • 手指衛生
  • 衛生用品の作り方
  • 面会
  • 外出

千歳市感染症発生時における応援協定

春先の経験とアンケート結果から草案づくりへ

もともと市内の事業所間の連携はよく、3~5月にかけて新型コロナ陽性者が発生して大変な時期も、市内や近隣地域の事業所同士で相互に協力し合っていたという。アンケートでも、いくつかの事業所から人材の応援協力が可能との回答があった。

そこで事務局は、新型コロナ陽性者が発生した場合、北海道などからの支援は依頼してから届くまでのタイムラグが想定されるため、迅速な人的・物的支援にあたりタイムリーに地域の事業所同士が協力し合う体制づくりが必要だと考え、応援協定の草案作りに動き出した。

草案作りにあたって、特に職員派遣に関しては、応援の期間や内容、派遣中の感染や事故のリスクなどの不安もあり、受け入れ側、派遣する側の事業所双方に必要な準備や明確な基準を設けることが必要だとわかった。また、北海道が行っている災害時における社会福祉施設等の相互支援協定との兼ね合いなど、検討すべきことがたくさんあったと言う。

そして、9月25日には連携の会が作成した応援協定の草案について説明し意見交換を行うための会を開催した。参加した事業所はそれほど多くなかったが、案に対する現場目線からのいろいろな意見をもらうことができ、それを応援協定に組み込んでいった。

提供:特定非営利活動法人ちとせの医療介護連携の会

(参考) 感染症発生に関する連携協定の関係書類

※特定非営利活動法人ちとせの医療介護連携の会ホームページ「新型コロナウイルス感染症特設ページ」https://chitose-renkei.com/covid-19.htmlから、「感染症発生に関する連携協定」の概要や連携協定書、加盟申請書・報告書、要請書等のダウンロードが可能です。

11月1日~ 感染症発生に関する連携協定の立上げ

2020年11月1日から感染症発生に関する連携協定を立ち上げることに決め、10月19日には加盟事業所の募集案内を、市内の事業所宛てにメールとファックスで送付した。現在のところ連携協定に加盟しているのは25事業所であり、連携協定を開始してから今までのところ、加盟事業所でクラスターが発生した事例はない。

坂本さんは、本来は多くの事業所に連携協定に入ってもらい、各事業所が無理なくできる範囲で、お互いのことを助けていくのが一番だが、介護の事業所は規模の小さなところが多く、本当に災害や感染症が起きたときに取り残されてしまうのが気がかりだと話す。そういった事業所の利用者を守るためにも、将来的には千歳市内全体で包括的に対応できる形をとっていきたい。そして加盟事業所などの意見を聞きながら、より実用的な協定にしていきたいと抱負を語る。

今後に向けて

坂本さんは、連携の会のようにNPO法人が直接市から感染対策にかかわる事業を委託されているところは、全国的に見ても少ないと思うが、この体制により、いい意味でフリーに、そしてスピード感をもって動けていると言う。

また、連携の会で、日頃から互いに何でも言い合える関係があることで、現場の皆さんから生の意見を聴いて、必要な対策につなげられていることから、コロナ禍で直接会うことが難しくても、この関係性を大事にしていきたいと話す。

そして、災害や感染症対策については第8期介護保険事業計画にも盛り込まれているので、今後も継続的に取り組んでいき、特設サイトも最新情報を更新したり、冬の時期に実施が難しくなっていた事業所への感染症予防の訪問支援を再開したりなど、重層的に活動をしていきたいと語った。

■参考 特定非営利活動法人ちとせの介護医療連携の会ホームページhttps://chitose-renkei.com/index.html

同、「新型コロナウイルス感染症特設ページ」https://chitose-renkei.com/covid-19.html

認知症ケアWEBフォーラム(令和2年11月5日)
「新型コロナウイルス感染症においてのちとせの介護医療連携の会の取り組み」
坂本大輔様ご講演資料
https://hitomachi-lab.com/research-info/wp-content/uploads/ちとせ_202011_新型コロナ関連取組み紹介.pdf

インタビュー担当:堀田聰子
記事担当:菅原かほる

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