みんコロラボ 〜みんな、新型コロナ対策どうしてる?〜

お花見ドライブ、盆踊り…命と人生の尊さを大切に「ふつう」を守り抜く

要約

合同会社くらしラボは、青森県十和田市で訪問介護や生活支援、デイサービス、小規模多機能ホームなどを複合的に展開している。代表の橘友博さんが大切にしているのは“あなたのふつうを考える”というコンセプト。

2020年春に、近隣で新型コロナのクラスタ―が発生した際の風評被害の大きさに「びびって」、外食イベントや面会を禁止するなど一気に自粛一辺倒になりかかったが、感染対策に配慮しながら、ふだんの彩りと季節折々のお楽しみイベントを着実に積み重ねている。

そのエンジンとなっているのが、橘さんが“スーパーマンみたいな人”と信頼を寄せる介護職員・中村昌昭さんだ。緊急事態宣言下でも命だけでなく「人生」の尊さを同僚に問いかけ続け、4月は回転寿司イベント、5月はお花見ドライブ、7月はそうめん流し、9月は盆踊りとお楽しみ企画の実現に奔走した。

敬老の日のお祝いに行った盆踊りは2020年が初めての開催。地域に伝わるナニャドヤラという踊りの保存会メンバーを慰問に招聘。中村さんも裏方仕事に加え、衣装や被り物に身を包み、盛り上げ役も買って出た。聞こえてきたお囃子に、地域住民らも思わず足を止めて、一緒になって踊り出してしまう嬉しいハプニングも。くらしラボではきっと今日も、利用者さんと近隣住民の笑顔が花開いている。

  • 青森県十和田市
  • コロナ禍でのイベント企画
  • 職員のモチベーション
  • 挑戦を応援する職場環境
  • 利用者の笑顔
  • 地域住民との交流

詳細

インタビュー実施日:2021年2月4日


この記事を読んでもらいたい方

  • 介護職,
  • 介護リーダー,
  • 介護事業所管理職,
  • 介護経営者,
  • 家族,
  • 地域住民,
  • ボランティア
法人名&事業所・施設名合同会社 くらしラボ
訪問介護サービス「訪問介護くらすけっと」
その他サービス「生活支援サービスくらしのミカタ」
オーダーメイド型デイサービス「くらしっこ」
居宅介護支援事業所「くらしの居宅介護支援事業所」
小規模多機能ホーム「くらしの家」
お話を聞かせていただいた方合同会社くらしラボ 代表橘友博 さんくらしの家/くらしっこ 介護員中村昌昭 さん

くらしラボとは

青森県十和田市にあるくらしラボは、地元出身で現在40歳の橘友博さんが代表を務める合同会社だ。同社は2015年にくらしの居宅介護支援事業所からスタートし、その後、「高齢者が楽しく過ごせるように。困ったら頼られる存在になりたい」と訪問介護、生活支援、デイサービス、小規模多機能ホームなど徐々に事業を拡大してきた。

橘さんは、くらしラボで介護事業を経営する傍ら、地域の中核病院のメンタルヘルス科のドクターと認知症について普及啓発する団体「じゅんちゃん一座」を結成。医療の話を寸劇などで分かりやすく一般の方に伝える活動も行っている。そのほか、多職種と一般市民で構成する「ライフリンクとわだ」の事務局長を務め、様々な団体や人と人をつなぐ活動にも取り組んでいる。

小規模多機能ホーム「くらしの家」
ご提供資料より

“あなたのふつうを考える”がコンセプト

橘さんが起業に至った経緯について伺ったところ、こんな答えが返ってきた。「もともとケアマネジャーとして様々な事業所を利用者さんに紹介する中で、利用者さんの希望というより、どうしても事業所側の都合に合わせてしまいがちなことが気になっていました。デイサービスやヘルパーさんを頼む理由というのは本来、人それぞれで違うはず。ですが、利用者さんそれぞれの要望や希望を叶えるのは一般的な事業所ではなかなか難しく、やはり事業所側の都合や大勢の人に合わせなきゃいけないというところが、ずっともどかしく感じていたのです」。

考えに考えた末に、「甘い理想かもしれませんが、自分の薄毛が進行してしまう前に(笑)、起業しようと決意しました」と橘さん。こうして立ち上げたくらしラボのコンセプトは“あなたのふつうを考える”だ。「人それぞれの“ふつう”は千差万別のはず。一人ひとりの普通の暮らしに向き合って、その地域ごとの普通に合わせて考えたケアをやっていこうという思いを、会社の理念に掲げました」。

スーパー介護士、中村さんとの出会い

くらしラボはまず2015年に「くらしの居宅介護支援事業所」からスタート。数多くの利用者さんの暮らしを支える中では、いわゆるゴミ屋敷と呼ばれるような家に暮らす人、複合的な課題を抱える世帯にも出会った。2016年には、訪問介護サービス「くらすけっと」と生活支援サービス「くらしのミカタ」という新しい事業を立ち上げる。くらしのミカタはその名の通り、地域住民の力も借りながら、雪かきや冠婚葬祭の手伝いなど、介護保険ではカバーできない、かゆいところに手が届くサービスを提供する事業だ。地域のなかで、困ったら頼られ、頼る存在でありたいのだという。

橘さんがこうした新たな事業展開を練る中で、「一緒にやらないか」と声を掛けたのが、当時、訪問介護事業を一人で行っていた中村昌昭さんだった。中村さんは現在、オーダーメイド型デイサービス「くらしっこ」と、小規模多機能ホーム「くらしの家」を兼務している。橘さんは中村さんについて、「とにかく“熱い人”。困ってる人がいると飛んでいっちゃうスーパーマンみたいに頼りがいがある介護士」だという。

中村さんが介護の世界に入ったきっかけは、設備系の前職の時に体を壊して半年ほど入院していた際にヘルパー2級の資格を取ったことだった。せっかく取った資格を生かそうと、退院後、ヘルパーとして仕事をしていくうちに、中村さんは自分の中で変化を感じ始める。「はじめは、介護の仕事は体調が良くなるまでと考えていたんですが、体が良くなった後も仕事が楽しくなってしまって。利用者さんに寄り添ってお話しするうちに、私の方が教わることの方が多いのにもかかわらず、『ありがとう』と仰ってくれて。その言葉を聞く度に、その方の思いをもっと叶えてあげたい、その人らしく生きられるように応援したいと考えるようになり、この世界にはまっていきました」。中村さんはそう振り返る。

利用者一人ひとりの想い、人生に寄り添う

橘さんと中村さん、ふたりの思いが重なって始まった「くらしのミカタ」と「くらすけっと」。2人にとって忘れられない利用者さんの一人がAさんだ。

Aさんが、「どうしても施設に居たくない、故郷に帰りたい」と本音を語った時、中村さんは、それならまずはAさんが希望した自分のアパートに戻ることから、と考えたという。時にはAさんと口喧嘩までしながら、お金をこつこつ溜めてもらい、生活環境を根気よく整えていく。同時に、本人の体調も整えた上で、「くらしのミカタ」を利用して、中村さんはヘルパーとして付き添い、Aさんの故郷である石川県金沢への旅を実現させた。金沢では、ただ一人の身内という妹さんに面会することもできた。一緒にお墓参りをして、夜は妹さん家族と食事も。大好きなお酒も少し嗜み、無事帰途につくことができたという。

利用者Aさんの故郷・金沢への旅に同伴する中村さん
ご提供資料より

さらに2017年には、「あなたの“ふつう”を考える」のコンセプトをより深く突き詰めていくために、オーダーメイド型のデイサービス「くらしっこ」をオープン。物件は、近所に増えていた空き家の一つを大家さんに頼み込んで借りた。「ここでは、毎朝、利用者さんが来た際に、その日一日をどう使うのか、職員と話し合って一緒に決めて過ごしてもらいます。職員と一緒に料理をする日があったり、時にはゆっくりお風呂に入る日があったりと、思い思いの過ごし方ができるようにしました」と橘さんは話す。

頼れる“お隣さん”としての小規模多機能ホーム

金太郎飴のような定番サービスが多いデイサービスへのアンチテーゼとして始めた「くらしっこ」の事業が地域で着実に受け入れられつつあった中、橘さんには、それでもまだ何かが足りないという思いがあった。「利用者さんが住み慣れた自宅でずっと過ごせるようにするには、頼れる“お隣さん”のような事業所が必要なのではないか…」。2019年に開業した小規模多機能ホーム「くらしの家」は、橘さんのそんな思いから始まり、介護の必要がない人でも気軽に寄れる地域のコミュニティスペースのような場所となることを目指した。

新型コロナウイルス感染が始まる以前は、2階はフリースペースにして、小学生から高齢者まで幅広い世代の地域住民を受け入れていた。学校帰りの子供たちが立ち寄って宿題をしたり、終わった子供はYouTubeなどを見て楽しんだり…。利用者の高齢世代と子供たちが一緒に折り紙をしたりして交流することもあったという。

くらしの家は千客万来

ご提供資料より

コロナ禍でみんなの“ふつう”が消えた

橘さん、中村さんが取り組んできた、みんなの“ふつう”の暮らしを守ることが難しくなったのが、2020年の2月下旬頃だ。新型コロナウイルス感染症に関する報道が日に日に増えていき、3月2日からは全国の小学校の休校が決まるなど、環境面での変化に加え、発熱時などに介護福祉サービスの利用を控えてもらうように通達が出るなど、くらしラボとしても感染対策のために事業内容を見直さざるを得ない事態になった。「春に近隣でクラスタ―が発生して、風評被害がひどかったのを見て、経営者としてはビビったところもありました」と橘さんは振り返る。

中村さんがこの時期、真っ先に考えたのが、「利用者さんが楽しみにしていた外出、行事がしばらくできなくなってしまう」という懸念だった。それまでは毎月、カラオケにも行っていたし、寿司などの外食にも出掛けていた。利用者さんたちにとっては、まさにこうした折々のイベントこそが、ふつうの楽しみだったからだ。

人がいなくて景色が抜群にいいところが青森にはたくさんある

そんな中で一体自分達に今、何ができるのか──。中村さんはスタッフ達とそこから考え始めた。感染予防の観点から密にならないことを重視して、「逆に、外ならいいんじゃないのか」という意見が出た。もちろん、人ごみに行こうということではない。幸い人がいなくて、景色が抜群にいい、そんな場所が青森にはたくさんあった。中村さんは、5月の連休明け、利用者さんらを連れ出し、桜を見に山に出掛けるドライブを企画する。「桜の時期は限られています。利用者さんたちは体を動かさなくなって食欲が落ちていたり、笑顔も消えていたり・・・。免疫にも悪影響があるんじゃないかという危惧もあって。そんなことをスタッフ同士でも話し、リスクはあるかもしれないけど十分な対策をして、桜を見に行こうと決めました」。

命だけでなく“人生”の尊さを問い掛ける動画を配信

緊急事態宣言中、スタッフの中には利用者さんの受け入れ自体に過敏に反応して、「家族にうつすかもしれないから、家に帰れない」と車で寝泊まりするという人もいた。スタッフ同士でもコロナへの警戒感に温度差があり、ぎすぎすした空気になった時も。

そんな時に、中村さんが起こしたアクションがある。自分の今の思い、行動する理由を語る動画を作って、45名の全スタッフに向けて配信したのだ。くらしラボでは全スタッフでビジネス向けのSNSを使っており、そこでスタッフに対して様々な注意喚起や情報共有を行っている。中村さんはこれに目をつけ、メッセージを投稿した。

「みなさん、家族や大切な誰かの命よりも大切だと思うこと、ありますか?」、中村さんが職員達に動画でそう語り掛けたのは、人々の命が大切で尊いものであることは大前提だが、その命よりも大事なものがたった一つだけある、それが、その人その人が自分らしく生を全うする“人生”なんじゃないか、というメッセージだった。中村さんの2回の動画配信にはSNS上でのコメントこそつかなかったものの、感じるものがあったスタッフからコメントが個別に送られてきた。

この配信を機に、スタッフの中では少しずつ空気が変わってきたという。お花見ドライブに行ったことに対しても、マスク、手洗い・消毒、うがい等基本的な感染対策は徹底し、車から降りずに帰ってきたこともあり、スタッフの間で「花見なんか行って大丈夫だったの?」という批判的な雰囲気にはならなかったという。

実は、このドライブ、橘さんには事後承諾だった。しかし橘さん自身も、中村さんへの信頼感がベースにあり、感染対策はきちんと行っていることを確認しているためか、「うちは、そもそも現場で行う一つ一つのことにお伺い立てるような空気じゃないから…」と笑う。

中村さんによると「花見ドライブの後、利用者さんたちがすごく多弁になって帰ってきたんです。桜や風景のことを思い出して、嬉しそうにお喋りしたり…」。そんな利用者さんたちのいきいきした様子を目の当たりにしたことで、スタッフらも好意的に受け止めるようになったのかもしれない。

出かけられないなら施設でやろう!回転寿司イベント

中村さんは、緊急事態宣言のさなかに、施設内で行う回転寿司イベントを企画したこともあった。「外食で出かけるお寿司を楽しみにしていた利用者さんが多かったので。外食が無理なら、施設で自分達で作ってみようと。お盆の上に、寿司の盛り合わせを載せて、手動で回転させる回転寿司を企画しました」。くらしラボのフェイスブックページには、中村さんが自らくるくる回す寿司のお盆を前に利用者さんが目を細めて楽しんでいる様子の動画が投稿されている。キッチンで寿司を作るスタッフ、運ぶスタッフなど、当日の楽し気な雰囲気が動画や記録の写真から伝わってくる。

回転寿司に続いて、7月には、竹を何本も重ねて、恒例の流しそうめんイベントも行った。駐車場で竹を前に素麺を準備する中村さん達の様子がフェイスブックページに残っている。

そうめん流しに目を細める
合同会社くらしラボ Facebookページより

スタッフの声から、一度は諦めた盆踊りの準備へ

こうした取組みを重ねていくうちに、スタッフ達のなかで、少しずつ感染対策をはかりながらのイベントの工夫が「ふつうのこと」になってきたものの、それでも、一度は「やはり今年は無理だろう」と諦めた企画があった。2020年に初めて開催を計画していた盆踊りだ。

町内会での踊り手不足などの背景から、盆踊りが開催できなくなる地域が増えており、「それも寂しいことだなと。だったら、うちで何かできることがあるんじゃないかとスタッフと話すうちに、ヘルパーさんにナニャドヤラ保存会という組織に所属している方がいることがわかり、それなら会の方に踊りを見せていただくイベントをと考えたのが始まりでした」と中村さん。

ナニャドヤラとは耳慣れない言葉だが、青森県南部から岩手県北部にかけての地域及び秋田県鹿角地方の旧南部藩領内に古くから伝わるとされる、いわゆる盆踊りのこと。地域によって踊りを継承させるための保存会を組織し、盆踊りの文化が伝承されているという。

2019年の秋ぐらいから、2020年夏の開催を検討し始め、「櫓を組んで、地域の人も集めて飲食もありで、本格的な盆踊りをやってみようと考えていました」と橘さん。しかし、コロナ禍で、地域の人を招いて飲食も提供してというイベントは、まだ難しいのではということで一度は諦めたのだ。

ところが、中村さんがドライブや回転寿司、そうめん流しなど、イベントの経験を積み重ねる中で、今度はスタッフから、「やっぱり盆踊りやってみたいね」という声が上がってきた。中村さんは「それがとても嬉しくて。そこからは、何とか実現しようという方向しか考えませんでした。建物の中ではなく外ではどうか、デイサービス、小規模多機能の合同行事にしようと。規模が規模なので、さすがにほとんど全スタッフを巻き込んだ形で計画を進めました。消毒や感染対策のことももちろん話し合いました」と語る。

スタッフ一人ひとりと管理者に話を通し、
町内会長ともうちあわせ

運営準備に動いたのは1か月ほど。最初は中村さんがスタッフ一人ひとり個別に話し、その上で各部署の管理者に話を通していった。少し反対されるかもしれないと感じられた管理者には、ほかの賛成してくれた管理者の反応を丁寧に伝え、みんなが企画に前向きになってもらうように説明を重ねた。「利用者さん達が中にこもってから長いし、今年は外で動く機会がなかったですよね。ここで一回、やってみましょうよ」という中村さんからの提案には説得力もあったのだろう、趣旨に賛同してくれた管理者が多かったという。

感染対策についても、看護師のスタッフがしっかりと内容をチェックしつつ、企画の実現に向けて、くらしラボは動き始めた。当初は、施設の中で踊り手の方々に慰問に来てもらう形を考えていたが、室内で密になるのは避けるべきということから、屋外で開催するという流れになった。

踊り手は、ヘルパーの女性が所属する「とわだナニャドヤラ保存会」の方々に依頼。感染対策では、保存会メンバーの行動履歴を確認し、検温、消毒、手洗い、距離の取り方についても、徹底して事前打ち合わせを行った。保存会メンバーの駐車場スペースを借りる依頼や、近隣に迷惑が掛からないように、また感染対策はどんなことを考えているのかといった説明のため、中村さんは町内会長と複数回、打ち合わせを行ったという。

地域住民も飛び入り参加で輪になった盆踊り
合同会社くらしラボ Facebookページより

みんなが輪になり、笑顔に

日程は、敬老の日をお祝いしようと、9月21日に決定。踊り手のみなさんのみならず、中村さんも裏方のイベントプロデューサーとしての仕事はもちろんのこと、当日は頭には被り物、衣装にお化粧まで施し、盛り上げ役も買って出た。そして、始まった盆踊り。

屋外のため、お囃子の音色がやはり少しは漏れたのか、「何をやってるのかなと、近所の方々が一人ふたりと、見に来始めて。そのうち、来た方達も輪になって踊り始めちゃったんです。これは、もう仕方ないなと」と橘さんは話す。想像以上に、地域の方々が飛び入り参加してくれたのは嬉しかった一方、「外部にばれちゃった」という気持ちも、正直あったという。「ただ、地域の方からは批判的な声は一切なくて。一緒になって踊ってくれましたし、ありがたいことに『やっぱりいいね、こういうの』という好意的な受け止めが多かったですね」(橘さん)。

中村さの感想はどうだったのか。「実際、やってみて、やはり本当に良かったと思いました。利用者さん達の反応がとにかく最高で。一緒に踊って、戻ってきて一言目には『やっぱり久しぶりだもん、こういうの』、『できてよかったね』って言い合って。ちょっとこの人はどうかなって思っていたスタッフに笑顔が見られたのも、とても嬉しかったですね」。

スタッフの中には、訪問介護から帰って来る途中で、これを見て思わず踊りに参戦してしまったヘルパーさんもいた。およそ1時間ほどで盆踊りは無事終了。最後はみんなで拍手。思い切りの笑顔で、気持ちよくイベントを終えられたという。

写真を見て分かる通り、実は当日の天候は、残念ながら雨だった。一度、全員で諦めて片づけたのだが、そこから晴れ間がのぞき、開催にこぎつけることができたのだ。中村さん達の諦めない思いに、天気も思わずミカタに着いた瞬間だった。

利用者さんと話す中村さん
橘様ご提供資料より

利用者さんとの会話から「やってみたい」を叶え続ける

コロナ禍で多くの介護事業所でこれまで当たり前に取り組んでいた様々な営みを諦める状況が続いている中で、くらしラボが次々に企画を実現できている原動力は一体どこにあったのだろう。最後に中村さんにそう尋ねると、こんな答えが返ってきた。「実は、利用者さんからの“声”がきっかけになることがほとんどなんです。色んなお話をするうちに、実はこんなことを諦めてるんだと、話してくださる方も多くて。そういう声を聞いて、何かやってみたいって言われたら、諦めずになるべく早く叶えてあげたいなと。ブレずにそう思っていることが一番大きいかもしれませんね」。

中村さんが利用者さんと話す時に心掛けているのは、家での会話のように普通に話すことだという。「ただ、話、聞かせてくださいというのでもなく…。『それ、私も一緒にやってみたいので、教えてください』みたいなことを言う時もあります。この仕事は、やはり利用者さんの笑顔を見られることが一番の楽しみ。会話の中でも利用者さんに笑顔になってもらいたいですし、一緒に働くスタッフみんなにもそういう楽しさ、やりがいを感じながら働いてもらいたいと思います」。

利用者はもちろん、共に働く仲間、近隣住民の笑顔も見られる介護事業所─。コロナ禍にあっても、橘さんの思い、中村さんの行動力が少しずつスタッフに浸透していくことで、くらしラボはこの先も今以上に地域に溶け込み、多世代の住民みんなの笑顔を引き出す町の“へそ”のような存在になっていくのかもしれない。

■参考 合同会社くらしラボホームページhttps://kurashilabo.co.jp/

インタビュー担当:堀田聰子
記事担当:新村直子

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